山根29 )交友抄(その八)・・・31号

交友抄(その8) 多摩慶応倶楽部文化セミナーから

山根 昭郎 (1975 法卒)

7月10日(水)の慶応倶楽部文化セミナーのテーマは「日本人の体質」、報告者は安

藤さん(S43工卒)、参考文献は『日本人の「体質」』奥田昌子著、講談社BLUE BACKSでした。

歳をとるにつれて健康や病気のネタが話題に上がることが多いものです。今回のテーマは、その意味で興味を引いたのはもちろんですが、今までの常識を覆すユニークな説が含まれていました。安藤さんの了解を得ましたので、講演内容からさわりの部分を紹介したいと思います。

1.体質を知れば常識が変わる

1) 欧米人と日本人とは体質が違う

l 体質は遺伝と環境が絡み合って決まる。

l 生まれ持った遺伝子は一生変わることがないと考えられていたが、遺伝子に傷がついて、遺伝子としての作用の仕方が変わることがある(遺伝子変異)。

l 環境要因によって遺伝子の作用が強まったり弱まったりすることもある(エピジェネティクス)。これは遺伝子そのものが変わるのでなく、DNAとその周辺に化学物質が付くことで遺伝子の発現を変える働きをする。近年注目され、現在多くの研究がされている。

l 病気にもお国柄がある。慢性白血病では、欧米では慢性リンパ性白血病が多いが、日本では慢性骨髄性白血病が9割を占めている。(前者は後者にくらべると症状がおとなしい。)

l 米国では人種によって体質が異なることから、人種差医療が導入されている。

l 病気と遺伝子(DNA)日本人と欧米人とでは遺伝子変異が来なるので、欧米の研究結果を参照するだけでなく、日本人のデータが必要になる。

2)日本人にとってこんな健康法は意味がない

l 日本人は頑張って筋トレしても「痩せ体質」にならない。筋肉には赤筋(長時間力を発揮できる)と白筋(瞬間的に大きな力を発揮できる)があるが、アフリカ系は筋肉全体の70%が白筋、欧米白人は50~60%が白筋なのに対し、黄色人種は全体の約70%を赤筋が占めている。筋トレをしてもアフリカ、欧米人に比べ日本人の筋肉はあまり増えない。

l 日本人はオリーブオイルを使いすぎると生活習慣病になりかねない

l 牛乳って必要? 日本人の骨粗しょう症発症率は米国白人の半分

l 日本人がヨーグルトを毎日食べると食物アレルギーを発症することも

l 日本人が赤ワインを飲んでも害の方が多い

2.生活習慣病の新常識

1) 糖尿病

大豆製品に含まれるイソフラボンを多く摂取する人は、インスリンがしっかりと効いていることがわかった。EPAやDHAを多く含む青魚をたくさん食べることで糖尿病発症率が下がることが示されている。(ところが欧米人は同じ結果が得られていない。)

2) 高血圧

l 食塩感受性は環境要因によって変動する。ストレス、肥満、糖尿病などによって大きく上昇する。災害などによる避難生活で以前の薬では血圧が下がらないという現象が発生している。複数の遺伝子に何らかの変化があったものと推定される。

l 脳出血のリスクは飲酒で2.5倍、喫煙で2倍。アルコールが分解される過程でできるアセトアルデヒドは有毒で、血圧をあげ同期を起こす。一連のアルコール分解にかかわる酵素は遺伝子で決まり、日本人を含む東アジア人の訳40%がこの酵素の働きが弱いとされている。

3) 脂質異常症と動脈硬化

l コレステロールや中性脂肪は脂質(あぶら)なので血液中に単独で存在できない。そこで水になじみやすいたんぱく質、リン脂質に外側を囲んでもらい「リポタンパク」という球状の構造をして血液中に存在する。

l HDLはHigh Density Lipoprotein(高比重リポタンパク)の略で、脂質より比重が重くたんぱく質やリン脂質の割合がLDL(Low Density Lipoprotein=低比重リポタンパク)よりも多い。

l HDLコレステロールはHDLの中に含まれるコレステロールを指し、厳密にはHDLとHDLコレステロールは違うもの。健康診断書で目にするのはHDLコレステロール(HDL-C)、LDLコレステロール(LDL-C)。

l LDLは全身にコレステロール、中性脂肪などを届ける役割があり、HDLは余分なコレステロール、酸化LDLなどを回収して肝臓に戻る。

l 日本人のHDLは米国白人より10%高くなっている。この原因のひとつとして魚と大豆の摂取が考えられ、日本人のLDLにEPA、DHAが乗っていることが明らかになった。DHAは中性脂肪とLDLを減らすが、HDLは減らさない。イソフラボンを多く摂取するほど心筋梗塞による死亡率が低下する傾向もある。

l コレステロールを増やさないために。コレステロールの内訳70%が肝臓などで合成され、食事から約30%が摂られる。したがいコレステロールを含む食品の摂取を避けるというより、以下に示すコレステロールの合成を促す成分を避けることが重要。肉の脂身、霜降り肉、ソーセージ、バターなど乳製品の飽和脂肪酸を含むもの、パン、スナック菓子など

以上

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