塩野秀作 (20)~日本初のワクチン接種~・・・42号

  「日本初のワクチン接種」

塩野秀作(‘76商学部卒 )

(日本香料協会2022年3月20日発行の会誌「香料293号」巻頭雑感に寄稿した記事をご紹介します。)

新型コロナウイルス感染症が、2019年12月中国武漢での感染者発見以来、世界に感染拡大し2年数か月が経過しました。その間、ウイルスは次々と変異し、感染力を強めたオミクロン株が急速な感染拡大をしています。世界では3回目のワクチン接種が行われ、日本でもようやく始まりました。

人類に惨禍をもたらした感染症で、完全に根絶させたものが天然痘(疱瘡)と牛疫だそうです。江戸時代末期に天然痘が流行り、大坂の町では緒方洪庵が天然痘(疱瘡)禍から人々を救うため牛痘種痘法普及の拠点、種痘(ワクチン接種)をする施設として大坂の古手町に除痘館(種痘所)を、嘉永2(1849)年11月7日に設けました。開所したものの閑古鳥で緒方洪庵は思案したようです。

道修町で薬種問屋を営む二代目塩野屋吉兵衛は、緒方洪庵と親交があり、開設の翌月12月に5歳の長男三代目吉兵衛に種痘を受けさせました。

2011年に塩野家資料の中から短冊形の塩野屋宛て除痘館発行の「疱瘡相済證」が発見され、財団法人洪庵記念会 除痘館記念資料室に届け、種痘(ワクチン接種)した最古の記録と判明しました。当時の江戸時代末期の日本でまだ安全とは実証されていない種痘を、二代目吉兵衛が如何に親交のあった緒方洪庵を信頼していたか、そして薬業を営むものとして種痘の意味を理解していたと考えられます。これは、日本初のワクチン接種と断定できるかどうかは分かりませんが、当時の大阪周辺では最初に種痘した記録として資料館に展示されています。二代目吉兵衛の博識とその決意に感動しました。

約100年前の世界では、「スペイン風邪」が流行し猛威を振るいました。では、「スペイン風邪」はどれほどの惨禍であったのか? 調べると、当時の世界の人口19億人の中で32%の6億人が感染し、当時の日本の人口5,500万人中、43%の2,380万人が感染しました。死者数は、世界4,000万人、日本39万人といわれています。当時の世界の人口19億人は現在78億人の24%、当時の日本の人口5,500万人が、現在の44%であったことを考慮しますと今回のコロナ禍よりもはるかに大変な状況であったことが分かります。世界では感染した人の6.7%の人が死亡しました。一方、日本では人口に比して感染者が多かったものの死亡率は1.6%と低く、そして、「スペイン風邪」の流行は3年間続き収束しました。

日本では、今年1月初旬から第六波到来となりました。2月4日現在、世界で感染者3億8,810万人、死者571万人、死亡率1.5%。日本で感染者312万人、死者19,171人、死亡率0.6%となりました。今回の新型コロナウイルス感染症も、当初は気管支や肺にウイルスが入り込み急性の呼吸器感染症となり、基礎疾患がある場合に重症化していましたが、変異を繰り返して、弱毒化しウイルスが生き残るために感染力は強くなるものの「ただの風邪」になるようです。あと1年間、感染予防は続ける必要がありそうです。そして収束に向かい平穏な毎日が戻ることを祈ります。

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                        (塩野香料㈱社長、大阪慶應倶楽部副会長)

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