万葉の花々(28)~秋の七草:フジバカマ(藤袴)
万葉の花々(28)~秋の七草:フジバカマ(藤袴)
萩の花 尾花葛花 なでしこが花
をみなへし また藤袴 朝顔が花 山上憶良 巻8-1538
この歌は最初に、「山上臣憶良(やまのうへのおみおくら)、秋野の花を詠(よ)む歌二首」とあり、
秋の野に 咲きたる花を 指折り、かき数ふれば 七種(ななくさ)の花 (巻8-1537)と秋の七草を詠み込んでいる。
藤袴は淡い紅紫色の花が咲くと、切り取って乾燥させる。葉が黄変してくるが、生乾きの頃には桜餅のような甘い香りがする。これは桜の葉と同じクマリンの香りである。
中国では「香草」「香水蘭(こうすいらん)」「蘭草」などと呼ばれ、身につけたり浴湯にいれたり、洗髪に使用されたそうである。秋の七草はいずれも薬用植物である。
ふじばかま (万葉表記 藤袴) フジバカマ (キク科)
キク科の多年草。秋の終わりにふさわしい香り高い花なのに、萩など秋の花に比べてこれ以外の歌はなく冷遇されている。 唐の時代には、香草として珍重されたようである。 藤袴」は『源氏物語』五十四帖の第三十第の名前である。玉鬘十帖のうちの第九帖。 フジバカマはキク科フジバカマ属。同属のヒヨドリバナやサワヒヨドリとの見分けは非常に難しく、葉に違いがあるとはいうものの、遠目に判別するのは至難のわざである。 |
七草の花の咲く順は。(新暦で) 山萩は、6月の梅雨の頃から仲秋まで。ついで河原撫子。朝顔の花(現在の桔梗)。女郎花と薄と葛は同じ時期から(8月中旬から晩秋まで)。遅れて藤袴(10月下旬)。 |
*フジバカマの花言葉は「あの日を思い出す」、「ためらい」、「躊躇」、「遅れ」
《参考資料》
1)フジバカマ(藤袴)の花の基本情報
- 学名
- Eupatorium japonicum
- 科・属
- キク科・ヒヨドリバナ属
- 原産国
- 中国、朝鮮半島
- 別名
- 蘭草(ランソウ)
フジバカマは秋の七草の一つで、万葉集で詠まれていたり源氏物語には「藤袴の巻」があるなど日本人に親しまれてきた草花である。奈良時代に中国から日本に渡来し、野生化したといわれている。今では河原や池のほとりなどの水辺を好んで自生している。
しかし、フジバカマは現在では国のレッドデータブックで準絶滅危惧種(NT)、京都では絶滅寸前種にも指定されている。
したがって、市販されているフジバカマの多くは「サワフジバカマ」というものである。茎と葉にクマリン系の香りがあり、中国では芳香剤として利用されてきた。
2)フジバカマ(藤袴)の葉や茎の効能
乾燥させたフジバカマの茎や葉っぱは、お茶や漢方薬、入浴剤に利用されるとされているが、フジバカマ本種は園芸店で入手できないので、自作して摂取することはやめておくように。