万葉の花々(18)~すみれ~
*万葉の花々(18)~すみれ~
春の野に すみれ摘みにと 来(こ)し我そ
野をなつかしみ 一夜(ひとよ)寝にける
山部赤人(やまべのあかひと) 巻八 一四二四
現代語訳:「すみれを摘もうと春の野に来たけれど、去り難くて一晩ねてしまった。」
じつに春らしい歌であるが、しかし、すみれが美しい女性のことを指すとの説もあり、「つい一晩泊ってしまった」と続く言葉としては「女性」の方が似つかわしい。
濃い紫色のすみれの花というのは素朴な愛らしさが感じられ、心を浮き立たせるような香りが漂ってきそうである。
すみれは、花の形が大工道具の「墨入れ」に似ているところから名付けられたといわれている。また相撲取り草や相撲花と呼ばれるのは、スミレの花が首をまげて鉤形(かぎがた)になっているので「花首をからませあって引っ張り合い、花の落ちた方が負けになる」遊びから付いた名前。
すみれは花も葉も生で食べることが出来る。花はサラダの飾りなどに用いられるが、ゼリーの中に入れるとびっくりするほど素敵な風情となる。
(『やまと花万葉』東方出版 2010.4.28)より
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「すみれ」については下記を参照してください。Sugimoto Chieko:ソフィア +124