ソフィアの音楽(2)~帰れソレントへ~

『帰れソレントへ』(Torna a Surriento)は、ソレントの美しい自然と一人の男性の恋心を描いたナポリ民謡。

*弾き語り演奏(ソプラノ独唱&ピアノ伴奏:杉本知瑛子・録音機種(Rakuten BIG)

次回公開予定:

写真:ソレントの風景(出典:Wikipedia)

1902年にイタリアの首相がソレントを訪れた際、ソレントの市長が(経済的支援を期待して)来賓をもてなすために、クルティス兄弟に作詞作曲を依頼した。

その当時は、ソレントの環境や自然を強調した歌詞だったが、その後歌詞が一部書き換えられ、今日知られる形となっていった。

歌詞の意味・日本語訳(意訳)

1.
Vide ‘o mare quant’e bello,
Spira tantu sentimento,
Comme tu a chi tiene mente,
Ca scetato ‘o faie sunna.

海をみれば その美しさに
多くの感情が湧き上がってくる
君に見つめられると
みな夢見心地になる

Guarda, gua’, chistu ciardino;
Siente, sie’ sti sciure arance:
Nu profumo accussi fino
Dinto ‘o core se ne va…

庭を見れば
オレンジの香り
その芳しさは
心に沁みる

E tu dice: “I’ parto, addio!”
T’alluntane da stu core…
Da sta terra de l’ammore…
Tiene ‘o core ‘e nun turna?

君は言った
「私は行くわ さようなら」
僕の恋心を見捨て
この愛の地から離れてゆく
君の気持ちはもう戻らないのか?

Ma nun me lassa,
Nun darme stu turmiento!
Torna a Surriento,
famme campa!

行かないでくれ
これ以上僕を苦しめないで
ソレントへ帰って来てくれ
僕を生かしてくれ!

2.
Vid’o mare de Surriento,
che tesoro tene nfunno:
chi ha girato tutto ‘o munno
nun l’ha visto comme’a ccà.

ソレントの海を見れば
それはまさに宝
世界中旅しても
このような海は見られない

Vide attuorno sti Sirene,
ca te guardano ‘ncantate,
e te vonno tantu bene…
Te vulessero vasà.

辺りにはセイレーンが
じっと君を見つめ
惑わし 君を狙っている

E tu dice: “I’ parto, addio!”
T’alluntane da stu core
Da sta terra de l’ammore
Tiene ‘o core ‘e nun turnà?

君は言った
「私は行くわ さようなら」
僕の恋心を見捨て
この愛の地から離れてゆく
君の気持ちはもう戻らないのか?

Ma nun me lassà,
Nun darme stu turmiento!
Torna a Surriento,
Famme campà!

行かないでくれ
これ以上僕を苦しめないで
ソレントへ帰って来てくれ
僕を生かしてくれ!

参考:日本語歌詞その1

かつての中学校の音楽教科書では、徳永政太郎の訳詞により日本語歌詞がつけられた『帰れソレントへ』が掲載されていた。次のとおり引用する。

1.
うるわしの海は うつつにも夢む
君の声のごと わが胸をうつ
オレンジの花は ほのかにも香り
恋に嘆く子の 胸にぞしむよ

あわれ君は行き われはただひとり
なつかしの地にぞ 君を待つのみ
かえれよ われを捨つるな
かえれソルレントへ かえれよ

2.
ソルレントの海は たぐいなき海よ
貴き宝を 底にうずむや
惑わしのシレンは 君の手をとりて
いと甘き声に 君を誘うよ

あわれ君は行き われはただひとり
なつかしの地にぞ 君を待つのみ
かえれよ われを捨つるな
かえれソルレントへ かえれよ

「惑わしのシレン」とは、ギリシア神話に登場する海の怪物セイレーンのこと。上半身が人間の女性で、下半身は鳥または魚の姿をしている。

セイレーンは海の航路上の岩礁にたたずみ、美しい歌声で航行中の人を惑わし、遭難や難破に遭わせたという。

ギリシア語のセイレーンはラテン語化されてシーレーンとなり、そこから英語の「サイレン」の語源となった。

日本語歌詞その2

近年の中学校向け音楽教材では、芙龍明子の訳詞による次のような日本語歌詞が掲載されている。

うるわしのソレント
海原(うなばら)はるかに
夕もやたなびき 思い出誘う
オレンジの香り ほのかにただよい
森の緑にも 風はささやく

今はただ一人 過ぎし日しのべば
砕ける波音 寂しく響く
帰れ君 故郷(ふるさと)の町
このソレントへ 帰れよ

うるわしのソレント 海原はるかに
歌声流れて 夢路に誘う
海の精(せい)シレーネ 妙なるその歌
やさしくいざない 君を招くよ

今日もただ一人 窓にたたずめば
星かげ夜空に 寂しく光る
帰れ君 故郷の町
このソレントへ 帰れよ

徳永政太郎の訳詞と同じく、「うるわしの」から歌詞が始まっている。

「ソルレント」が「ソレント」に改められ、セイレーンを表す「シレン」も「シレーネ」となって分かりやすくなっている。

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ソレント(sorrento)というのは、ナポリ湾に望んだ小さな町で、ナポリ方言ではスリエント(Suriento)という。

ここは静かな海に面し、ヴェスヴィオの噴煙を眺め、風光明媚である。夏は海水浴客で賑わい冬は温暖な地に避寒者が集う。

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