万葉の花々(12)~卯の花(ウツギ)~

   《万葉歌》

卯の花も いまだ咲かねば ほととぎす

佐保の山辺に 来(き)鳴きとよもす

 大伴の家持(巻八ー一四七七)

(現代語訳:卯の花もまだ咲かないのに、時鳥(ほととぎす)が佐保の山辺にやって来て鳴きたてています。)

「卯の花」は山野や谷間などに自生するウツギのことで、卯月(旧暦4月)に咲くことからこの名がついた。

花は星型の白い小花で、枝先で円錐状の花房になって咲く。

“小学唱歌「夏は来ぬ」では「うの花のにおう垣根に・・・」と歌われているが、花の香りはそれほどでもない。これは「咲き匂う美しい花」の意味である。”との解説に。・・・ん?この説は正しいのか、気になって調べてみた。

ウツギの花の匂いとはどんなものか? 図鑑や解説書にも、あまり匂いのことは触れられていない。「匂いはなく、匂うがごとく咲き誇るという形容だ」という説も多いようだが、専門家によると、「ウツギの花には香りがあって、花数が少ないと香りは薄いが、花数が多いと香りは強調されるようだ。ウツギの花の香りは花蜜と花粉がベースになっているのではないかと思われる」とのことだった。・・・・この説も如何なものか?飽くなき探究心は豊な香りを放つウツギの花の種類に行き着いた。

ウツギには多用な種類があり、ほとんどの花は匂わないそうだが、ただ「バイカウツギ(梅花空木)」といわれている花のみ、独特の香を放つようである。バイカウツギは真っ白いふっくらとした花で、野山にも自生しているウツギである。♪うの花のにおう垣根に・・・ここで歌われている「うの花」は「バイカウツギ」であろうということで一応納得できた。

*枝や葉、果実(種子)には解熱や解毒作用があり、民間薬にも使われている。

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ウツギ(空木、学名:Deutzia crenata)はアジサイ科ウツギ属の落葉低木。別名はウノハナ。ユキノシタ科で分類される場合もある。

和名のウツギの名は「空木」の意味で、茎が中空であることからの命名であるとされる。花は卯月(旧暦4月)に咲くことから「卯(う)の花」とも呼ばれ、古くから初夏の風物詩とされており、清少納言の随筆『枕草子』には卯の花と同じく初夏の風物詩であるホトトギスの鳴き声を聞きに行った清少納言一行が卯の花の枝を折って車に飾って帰京する話がある。近代においても唱歌『夏は来ぬ』で歌われるように初夏の風物詩とされている。

花言葉:『古風』『風情』『秘密』『乙女の香り』

ウツギの幹や枝は中が空洞になっていて、外面からでは中の状態がわからないことから、「秘密」という花言葉が付けられた。「古風」や「風情」という花言葉は、枝に垂れ下がって咲く白い花の姿に由来する。(花期は5月~6月)

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*「佐保」は、奈良市の北部にあり、佐保川が流れている。東大寺正倉院から法華寺を結ぶ一条通りがおおむね佐保路にあたる。

平城宮に近く、八世紀頃には貴族や高官たちの邸宅が立てられ、大伴家持の邸宅も佐保にあったらしい。その北側一帯の丘陵地が佐保山で、寺院や古墳が多い。

佐保山は松や竹、雑木林に覆われ、初夏ともなれば卯の花やツツジが咲き乱れる自然に恵まれた場所であった。近年幹線道路がすぐそばに造られその変貌は著しいものがある。

ソフィア      +275

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