万葉の花々(11)~思い草・ナンバンギセル~
(万葉集) 道の辺の 尾花が下の 思ひ草 今更々に 何か思はむ
(巻十 二二七〇)
(読み:みちのへの おばながしたの おもひぐさ いまさらさらに なにかおもはむ)
現代語意味:今更何を思い迷うことがありましょうか。私はあなたの愛を信じ、あなた一人を頼りに思っております。
「思ひ草」というのは、現在の「南蛮煙管(ナンバンギセル)=写真左)のことである。
ナンバンギセルは、尾花(ススキ)・茗荷(ミョウガ)・砂糖黍(サトウキビ)・栗(クリ)などの根に寄生する植物である。花の形がタバコのパイプにそっくりなため、別名煙管草(きせるそう)・オランダ煙管(オランダぎせる)とも呼ばれている。
淡い紫色の花が少しうつむき加減に咲く。しかし、葉らしいものは見あたらない。青々としたススキの株元で、そっと寄り添うように咲く姿には趣きがある。
*一年草・寄生植物・花期8月~10月、茎はほとんど地上にでない。ススキの株元に出る土筆に似た茶色の棒状のものは、花柄(かへい:花をつける柄の部分)である。
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写真右:宮川直遠氏撮影「ナンバンギセル」、写真左:ナンバンギセルが自生する曽爾高原(奈良県)
ソフィア +306