塩野9)大病を経験し思ったこと・・・(30号)
大病を体験し思ったこと 塩野 秀作 (’76 商)
私事で恐縮ですが、私は12年前大病で4ヵ月半に亘る長期入院生活を余儀なくされました。花粉症から慢性気管支炎と症状悪化、数十億円を投資した新事業の医薬原薬製造受託会社の立ち上げから連続5期に及ぶ赤字によるストレスがかかる中、不運にも高校関西地区同窓会会報を急遽長期出張になった先輩の代わりに編集をやることになった。四ヶ月前から予約の鼻茸除去手術での1週間入院後、深夜までの顧客接待・会食もあって疲労困憊の状態の中、就業時間外にそれも4日間以内に私一人で会報編集をやらねばならず、やむなく4日間連続の睡眠時間3時間で何とか仕上げた。しかし、両手両足に強い痺れを感じて、週末には左足が動かず、痺れのため両手の全指に感覚がない状態となって、両足両手の全指がほとんど動かない状態で4ヶ月半入院することになった。
当時、大阪でも有数の大病院に入院したが、レントゲン検査、CT検査、MRIをしてもすぐに病名が判明せず、数日後に皮膚に両足首周辺に発症した炎症により皮膚科の医師が、チャグ・ストラウス症候群と診断してくれた。大変珍しい病気で年間100程の発症例しかないということであったが、私の義兄の友人である経営者2名が、私と同時期に病気になったということなので、本当はもっと多いのかもしれない。この病気は、今では、「好酸球性多発血管炎性肉芽腫症」という病名になり難病に指定されている。
入院後1ヶ月経過した時点で、早くリハビリを始めたほうがよいということでやり始めたが、思うように両足の足首が動かず、足先が垂れた状態であった。リハビリ開始の最初の1ヶ月、ほとんど改善の進捗もなく、いつになったら靴を履いて普通に歩行できるのか、まったく分からないがやるしかないと思いやっていた。
長期入院して感じたことは、健康の大切さと平凡無事に暮らすことの有難さであった。そして、「幸福」とは、その状態にある時には、自分自身で感じられず、その状態でなくなった時に、あの時は、幸せだったと感じるものなのだと強く思うようになった。しかし、この状況が、自分の生活スタイルについてじっくりと考える絶好の機会となった。
まず自分が、今ここに存在するとはどういうことなのか? 地球誕生から46億年、人類誕生から約600~700万年だそうだが、今、自分が生きているということ、私の生命は地球誕生から続いているのだと思うと、私のこの生命は大切に次代へつないでいきたいという種族存続の願望を強く抱くことになった。
こういうことを考えている時、前から聞いていたものの正直言ってそれほど強い関心はなかったのだが、今回は、LOHASという言葉に強い関心を持ち、その内容を詳しく知り、そのライフスタイルに共感した。もうご存知の方もおられると思うが、そのLOHASについてご紹介する。
LOHASとは、(Lifestyles Of Health And Sustainability)健康で持続可能なライフスタイルの頭文字です。この言葉は、米国でオーガニック農産物によって社会を再生する活動を行っていた活動家とビジネス関係者によって考案された。日本では、2005年からメディアで盛んに取り上げられてきた。人間の健康と環境の保護を最優先し、持続可能な社会のあり方を追求する新時代のライフスタイルで省エネ、リサイクル、自己治癒力で身を守る、スローなエコライフが、LOHASの暮らし方である。日本は、かって世界最高の生産性を誇った時期もあり、物的な豊かさを得た。しかし、環境を汚染、破壊し、小中学校では、約13万人の登校拒否の児童生徒や毎年3万人の自殺者を出す社会を生み出した。このような社会が良いはずはない。環境・健康にほとんど関心がなく、それらを犠牲にし、欲望の思うがままに自分勝手に暮らすような生活から早く多くの人々が目覚めると、ぎすぎすした社会も変わりもっと人間らしく健康的で環境汚染をしない生活ができるのではないかと思う。
日本は今や国際比較しても経済優位性も低下傾向であり、国連が発表した「世界幸福度ランキング2018」では、54位という残念な結果である。
また、働き過ぎで体調を崩したりする人も少なからず、まだいる。昨今、働き方改革が叫ばれている。生産性向上により豊かな社会を実現していきたい。
心がすさんでいる時や落ち込んでいる時には、部屋に好みの香りを漂わせてみると、随分と心が安らぐ。香りは私たちの生活に潤いをもたらし、大いに役立つものである。だから、香りのある
LOHASな暮らしを多くの人がめざせば、世の中もっと住みやすくなるのではないかと思う。
(塩野香料(株)社長、大阪慶應倶楽部副会長)