ソフィアさんちのチルちゃんと僕(62)~天才と凡人(5-2)~

「今年(2022)のオリンピックでは連覇を目指していたのに残念だったね。」

「しかたがないわ。あまりにも自分が王者であることにこだわりすぎていたようだから・・・」

「死ぬほどの努力が報われなかった、とも言っていたよ。」

「今まで以上の死ぬような努力をしても、心のどこかに自分は世界で唯一無二の王者であるという意識(雑念)に縛られていたはず、とソフィアさんが言っていたわ。」

「・・・王者なのに王者だと思ってはいけないの?」

“白金ノ独楽”という北原白秋の詩があるわ」

感涙(カンルイ)ナガレ、身ハ仏、
独楽ハ廻レリ、指尖(ユビサキ)ニ。

カガヤク指ハ、天ヲ指(サ)シ、
極(キハ)マル独楽ハ目ニ見エズ。

円転、無念無想界、
白金ノ独楽音モ澄ミワタル。

「ソフィアさんの大好きな詩の一つ。”身は仏”となり、“極まる独楽は目に見えず”でなければならないのよ。そこに雑念の入る余地は全く無い、そういった無念夢想界が芸術の世界だと思っているの。音楽家が権力や名誉を求めることは雑念であり、そういうことにしか目がいかない人間は芸術とは全く別の世界の住人であると考えているのよ。

だから羽生さんはもうお終いかと思っていたらしいのだけれど、最後に彼は再度挑戦をする!今度は挑戦者として!というのが分かり、ソフィアさん大喜びをしていたわ。」

「天才と凡人(5-2)

《2、それは全ての関係者が、その異次元とも言える演技を、彼のコーチ、ブライアン・オーサー氏が、「勝つ」ために明確な戦略をたて、羽生選手が血のにじむような努力をした結果である、と知っていたからであった。

選手が一人でいくら血反吐を吐くくらいの努力をした所で結果が伴うとは限らない。優秀なコーチがあらゆる知識や情報を元に、その選手に可能且つ明確な戦略を立てて初めて選手の努力は得点へと結実するのである。

私は試合後の彼(羽生結弦さん)の言葉が忘れられない。

たしか「カナダ戦以後、今までしたことがないようなそれこそ血の滲むような練習をしてきました。~そのような練習をさせて頂けたことをコーチをはじめ関係者皆様に心から感謝します」だったように思う。

20歳の若者が成しえた演技はそれこそ天才のみが到達しえるような演技であったが、しかしその才能を花開かせるためには天性の能力以外に99%の努力(本人の努力だけでなくコーチやその他の関係者の総合的な助力も含めて)が必要だったのである。

話は戻る。福澤先生と中川先生の重要な共通点として「洋行」と「外国語の習得」が挙げられる。》

写真:「白石常介文芸集」より「桜」

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