ソフィアさんちのチルちゃんと僕(108)~交詢社とシューベルティアーデ③-5~
「702セントってなんだったかな?」
「5度の音程の響きが純正だってことだったでしょ。」
「響きが純正だってことは、え~と・・・純正律の・・・」
「まあ、純正律って言葉を覚えていたのね。かしこいクーちゃん。」
「自然界の音の倍音を使って調律すれば、きれいな響きの純正律の響きになるのよね。もっとも全調というわけではないんだけれど・・・」
「とにかく、702セントの音程はきれいに調和した音だっていうことだけは僕でも分かる!」
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《5、 それは「辻音楽師」での動きの無いドローン(辻音楽師が持つ楽器)の響き(ヴェルクマイスター音律では702セントの純正で単調な美しい響きとなっている)のなかで、シューベルトは主人公の諦念を表現したのである。
純正で単調な響きは主人公を部分的諦念のような主観的で感情的な嘆きの中には置いていない。主人公は客観的な目で、絶望の象徴のような辻音楽師を見ているのである。そして、その気持ちを702セントのドローンの響きが我々に伝えてくれるのである。
しかし、それは急に全体的諦念になったわけではなく、「辻音楽師」に至る以前の曲で主人公の主情的であった諦念が変化しているのである。(第20曲目=部分的諦念からの脱出の努力、第23曲目=部分的諦念からの解放、第24曲目=全体的諦念に至る)