天川24 )新時代の企業家によせて・・・35号

「新時代の起業家によせて」

 天川貴之(H3、法・法律)

資本主義も大いなる試練の時を迎えているが、このような時に最も望まれているのが、新しき時代を切り拓かんとする起業家である。

かつてアメリカンドリームを創出したのも、数人、数十人の優れた起業家なのであり、優れた起業家に押し上げられるようにして、国家は豊かになり、繁栄し、また、その豊かなる基礎力によって、学問や芸術が育まれてゆくのである。よって、ジャパニーズドリームの潮流の始まりにおいて、今、その火ぶたを切るものは、新しき起業家であり、新しき起業家を待ち望むような時代の雰囲気である。

新しき起業家達よ、今は、大不況の大波が日本をおおっているようにみえるけれども、このような時だからこそ、あなた方の船出する時期でもあるのである。大波とたわむれ、大波を克服する所にこそ、新しきサクセスストーリーの生ずる源があるのである。

今、日本は、一部の、未来の無限の豊かさを心の内に秘蔵せるものの想念と、大多数の、過去の有限なる貧しさや不安にうちひしがれているものの想念の、相剋する時代を迎えているのである。そして、未来への希望を抱く人々が、このような時代の逆流を乗りこえて、自らの剛き信念の下に、圧倒的なる希望の念いを実現し始めた時、そこから、新しき希望の時代が拓けてゆくことになっているのである。

故に、今こそ、新時代の起業家にとっては最高の試しの時期であり、最高に自らの信念が鍛えられている時期でもあるのである。あのサーファーが波乗りに、あるものは成功し、あるものは失敗するように、数多くの起業家達が試練の波に呑みこまれてゆく姿も見えるかもしれない。厳しい現実の前に、はかない夢が数多く打ち砕かれてゆく姿も見えるかもしれない。しかし、時代は、一握りの真なる希望を掲げつづけた方々が、新しき大陸にたどりつくことを待ち望んでいるのである。本物の信念ある勝利者をこそ、待ち望んでいるのである。

かつてのアメリカンドリームにおいて、数多くの成功者達によって実証されたことは、一体何であったか。それは、「念いが実現する」という真理なのである。まさしく、夢そのものに力があるという真理なのである。

確かに、夢そのものは、目にも見えず、耳にも聞こえず、限りなく茫漠としたものに思われがちであり、故にこそ、価値なきものとして一蹴されることが多いけれども、一度、心の底の底より湧きおこる夢を確たるものとして念い描き、その想念を持続させる時に、そして、その夢の実現を深く確信して努力しつづける時に、一〇〇%実現するものなのである。

これは、ニューソートの幽祖であるエマソンが、その一連のエッセイの中で力説された唯心所現論を、トラインをはじめとする数多くの成功哲学者達が具体的かつ実践しやすいものに体系化して広めていった思想であるが、アメリカで確固たる実績を残した大起業家達は、ほとんど例外なく、この思想の力によってこそ大成功を成し遂げたのであると自ら証言されているのである。

鉄鋼王といわれるアンドリュー・カーネギーにしても、すべての巨富、すべての成功の源は、アイデアから始まるということを、一生涯かけて学びとった成功法則として、証言されているのである。

また、彼は、若きナポレオン・ヒルに、同時代に生きた数多くの成功者の卵達に、念いは実現するという真理を実践していただいて、その効果の検証と、それに基づく成功哲学の体系化を依頼されたのであり、その成功者のリストの中には、発明王エジソンや、ベル博士、また、自動車王ヘンリー・フォードや、石油王ロックフェラー等の、蒼々たる名前が挙がっていたのである。

これは、紛れもない歴史的事実であり、このような繁栄の法則、成功の法則を、数多くの思想書を通して、世の新しき常識として確立し、かつ、数多くの経営者を通して実証してみせえたということは、アメリカの数百年の歴史の最高の成果の一つであり、まさしく人類への遺産の一つであるのである。

かつて、マックス・ウェーバーが、その著「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」の中で、プロテスタントの世俗内禁欲の精神態度が資本主義の中には流れており、この精神態度こそが近代の繁栄を創出する原動力になったということを述べておられるが、アメリカにおいては、このプロテスタンティズムのみならず、エマソン以来の伝統であるニューソートの精神、すなわち、唯心所現説に基づく積極的精神態度こそが、二十世紀のアメリカの大繁栄を創出する原動力となっているのである。

このように、ニューソートの思想は、資本主義の精神に新たなる理念を流入させ、新たなる資本主義を創出したともいえるのであり、資本主義に流れる自由の精神に対して改良を与えんとしたケインズ思想と並んで、いや、その実際の影響を考えてみれば、それ以上に重要な要素なのである。

これより、日本においてジャパニーズドリームのうねりを起こしてゆく原動力もまた、ニューソートにその源を汲みとりながらも、同時に永遠なる一なる繁栄の理念を体現しているような、新しき時代のための新しき成功哲学であろう。

故に、新しき時代の起業家とならんと志している方は、まず、念いにおいて大成功者たらんことを決意してゆくべきであり、その念い、その夢において、決して自己限定をするべきではない。偉大なる夢こそが偉大なる人生を創造し、偉人を創造するのであって、小さな夢は、小さな人生と小人を創造するからである。

今の時代に求められているのは、平均的な小さくまとまった人材ではなく、全く新たな時代を切り拓いてゆくに足る巨人である。その巨人とは、まず、夢において、巨人であることを実証するのである。そして、あらゆる抵抗や困難に面して、決してその偉大なる夢を後退させることなく、貫き通す信念をもって、自己の人生を創造してゆくのである。

たとえ、あなたの前に何もなく、自分自身は何の資材も与えられていないとみえても、あなたには、人間である限りにおいて、心が与えられ、心の内に、無限なる夢を抱く力、無限なるアイデアを汲み出す力、そして、無限なる夢を実現せんとする、情熱、意志、エネルギーが与えられているのである。

あなたが大起業家となるために必要なものは既に与えられているのであり、無一物中無尽蔵なる宝が内蔵されているのである。しかし、この宝に気づかず、この宝を発掘しないで、有限の小さな人生を終えてしまう人間が数多くいるのである。

しかし、無限なる夢を抱き、偉大なる夢を実現してゆく道は、本来、万人に開かれているのである。万人が平等に、大いなる夢を実現する機会が、それを要求する内なる使命、内なる個性とともに与えられているのである。

サクセスストーリーはいつもゼロから始まるのであり、心一つをもって、大いなる夢を抱き、大いなる夢を実現せんと決意した時にスタートを切るのである。自己の内なる理想を信ずる程度に、あなたの理想は現実化してゆくのである。あなたが自己の偉大性を信ずれば信ずる程に、あなたは、偉人としての本性を発揮してゆくのである。

だから、新時代の起業家達よ、まず何よりも、自分自身の内なる偉大性を信じよ。自分自身の内なる理想を信じよ。自分自身の内に既に実現している所の光輝ける未来の姿を信じよ。未来のあなたは、現在の自分とは見違える程の力強い積極的な確信に満ちた声で、あなたに訴えかけているはずである。汝よ、かくあれ。汝の理想像こそが、真なる汝自身であると。

あなたは、この内なる光満ちた声に忠実であることだ。内なる良心を通して示された所の地図をもって、これから人生という大冒険に挑戦してゆくのだ。確かにリスクもあるかもしれない。失敗も困難もあるかもしれない。しかし、それらすべてを、自己の精神力を磨く糧となし、それらすべてを成功の礎となさんと決意した人間にとっては、失敗は失敗でなく、困難は困難ではなく、むしろ、人生の醍醐味、成功の醍醐味となってゆくのだ。

その時に、人生という無限の可能性を内蔵せる一大舞台の中で、大いなる愛に生かされつつ、かつ、主体的に人生を創造せんとする人間の幸福を、心底実感出来るようになるに違いない。

無限の可能性は前途に洋々と開けているというのに、その可能性を自ら閉じてしまっているとは、何と残念なことではないか。本来、この地球よりも大きい未知なる夢の可能性が与えられているのに、その億分の一の夢もかいまみることも、また実現することもなく、一生を終えてしまうということは、本当に残念なことである。

新時代の起業家達よ、あなた方こそ、新しき時代を飾るにふさわしい、スケールの大きな人生の冒険者であれ。あなた方が明るい希望を抱いた程度に応じて、時代は光明に満ち満ちてくるであろう。たとえ、周りが暗い話に満ちているようにみえたとしても、そのようなことは、あなたの心の内なる永遠の世界には、何らの関係もないのである。

あなた方が無限に明るい未来を創造してゆくのは、まさしく主体的なる自由であり、真に光満ちる夢を抱き、その大いなる理想を実現せんとする新しき起業家達が数多く出現してゆけば、このような夜の闇の中からこそ、新時代の夜明けを告げる太陽を昇らせてゆくことができるのである。

日の出ずる国、日本のジャパニーズドリームは、必ずや、その中より新しき、独自の、太陽の時代を築いてゆくのである。

(天川貴之:JDR総合研究所代表・哲学者)

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