天川25 )ルネサンス文化都市加古川構想・・・36号

[関西文学賞受賞]

          「ルネサンス文化都市加古川構想」

       ~大いなるカントリー、快適なる文化都市~

                                           天川貴之(H3、法・法律)

大いなる日本ルネサンスの胎動が、今始まりつつある。日本には、日本独特のルネサンスがあり、新時代には、新時代独特のルネサンスがあり、かかる新生の理念の息吹きが、一人一人の新時代を担う人々の内に徐々に芽生え、成長してゆかんとしているのが、戦後五十年を迎える現代の日本の精神的風景なのである。

こうした時代背景にあって、特に関西を中心として、一つの大いなる文化的潮流が、今後生まれてゆくのではないかと予想される。その一つの軸は京都にあり、その一つの軸は大阪にあり、そして、大切な一本の軸が、この兵庫にある。

兵庫県とは、多様なる個性をその内に内包した県であって、一様に評することは難しい。あくまでも、限りなく個性的な一つ一つの都市について、見てゆかねばならない。「神戸」も、「明石」も、「姫路」も、「芦屋」も、「龍野」も、そして「加古川」もそうである。

加古川という都市について考え巡らしてみると、一見、非常に地味で、素朴な中堅都市にみえるかもしれないけれども、これ程に、新時代の核となるべき潜在的可能性を宿している都市は、外に例がないのではないかと思える。しかも、関西ルネサンス、兵庫ルネサンスの拠点ということから考えてみれば、非常に大切な理念が、この都市にはあるといえるのである。

兵庫という地は、「日本」を一つの生命体として観じた時に、「子宮」の理念を有しているのである。かつて、日本神話の中で、伊邪那岐、伊邪那美の国生みの最初に生み落とされたのが淡路島であるということは、こうした象徴である。

この度の関西大震災の要因も様々に考えられるが、一つは、新時代の理念を生み落とし、それを現実化してゆく上での、生みの苦しみを象徴しているといえなくもないのである。

しかし、苦しみは、苦しみそれ自体のためにあるのではない。より大いなる悦びの序曲であってこそ、意味をなすものである。そのように、苦難をも積極的にとらえ、積極的に関西の運命を、兵庫の運命を、そして、日本ルネサンスの運命を開拓しなければならない時期にきているといえるであろう。

このような兵庫という土地が有する「母胎」、すなわち、聖なる創造の源という観点にたって加古川を観じた場合、そこには、聖なる創造の源となる環境がひらけていないであろうか。大自然の母なる大地がひらけていないであろうか。

大自然ののどかさ、美しさ、潤い、豊かさは、あらゆる創造の源となるものである。芸術家の創造力のあらゆるインスピレーションの源となり、哲学者のあらゆる思索の源となり、ある時は、宗教家の聖なる啓示の源となることもある。

それは、例えば、日本の神社のある場所がいかなる所にあるかということを考えてもわかる。決して都会の真ただ中の騒がしい所を、神は好まれないのである。神社は、常に大自然と共にあり、大自然の一部のようにして、木造建築が、静かに深く息づいているものなのである。

かつて、ヘーゲルは、人類の最高の文化的営みは、絶対精神の発露である「芸術」、「宗教」、「哲学」であると云われたが、こうしたルネサンスの核となる「理念」そのもの文化は、「理念」が限りなく聖なるものであるが故に、それを育む土壌として、大自然の環境を要請するのである。

大自然の内には大いなる生命があり、精神がある。かかる大生命、大精神と一体となる過程において、あらゆる文化が、生み落とされてゆくのである。

日本ルネサンスにふさわしい新生日本の芸術、新生日本の哲学、新生日本の宗教が生まれてゆく時期は、もうそこまできている。それは、二十一世紀の時代の太陽が昇る頃に生まれ落ち、芽を伸ばし、大輪の華となって咲いてゆくのである。

新時代は、現代に生きる人々の多くが心の奥底に直観しておられることであろう。新しい光ある時代の予感を有しておられるであろう。それが、時代とともに歩み、新時代の精神について深く瞑想し、直観している者に共通したビジョンなのである。

こうした新時代のビジョンの下に、未来のルネサンスを築き上げ、生み落としてゆく時期に必要なものは、ルネサンス運動を育むに足る、文化的土壌である。それが、この加古川という都市には、求められているのではないかと思うのである。

私が、様々な地を旅行してみて、神戸や、明石にも、姫路や、龍野にもない、何もないようでいて「大いなる場」としてある、絶対無にも似た愛が、この地には確かに息づいているように思えるのである。日本海と瀬戸内海にはさまれ、なだらかな中国山地に育まれ、大いなる豊饒なる四国風景がある「創造の場」が、ここには大自然によって創られているのである。

もちろん、大自然があるだけでは文化が発達するわけではない。文化は、ある程度、文明との相互作用を持っているので、かつてのギリシャのアテネやかつてのイタリアのフィレンツェのように、文明の拠点から、さほど遠くない近郊に求められることが多いのが歴史的真理である。

これからの日本ルネサンス、そして加古川という都市の未来を考えてゆくに際して、私は、その最高のモデルは、かつてのアメリカルネサンスの土壌となったコンコードに求められるのではないかと思う。

コンコードは、ボストンから数十キロの所にある大自然が広がる美しい田園地帯であるが、ここが、アメリカの歴史的大転換期に、大いなる揺籃の地として、他のどこの都市よりも機能したといえるのである。

例えば、アメリカ独立戦争の発端は、そのすぐそばのレキンシトンであり、本格的な口火を切ったのが、このコンコードの都市なのであり、また、文化的に観ても、「アメリカの精神的独立宣言」をなしたことで有名な、思想家にして詩人のエマソンが好んで住みつき、彼は、ここで数多くの思索と著作活動をされていたのである。

他にも、この地からは、アメリカルネサンスの核となるソローや、オールコット、また、ホーソンや、ロングフェローなどが輩出されている。

コンコードには、「コンコード川」という美しい川があり、「ウォールデン湖」という美しい湖があり、かかる大自然と一体となって、エマソンの代表的著作「自然論」は生まれたし、ソローの「ウォーデン 森の生活」や、オールコットの「若草物語」等が生まれたのである。

これらの作品に共通していることは、コンコードの美しい自然と不即不離の作品であるということであり、これらの作品は、コンコードを母胎として生み落とされたということである。確かに、古き良きアメリカの最高の故郷が、このコンコードにあるのである。

そして、ボストンが、日本の神戸や、大阪などにあたるとすれば、ボストンそのものではなく、ボストン近郊の田園都市コンコードがアメリカルネサンスの基軸となったという点に、我々は、深く着眼しなくてはならない。

翻って、加古川の環境について考えてみると、まず、美しい「加古川の川」があり、また、静かな「平荘湖」や、「高御座山」を中心とするのどかな山々と、広大なる「田園風景」、そして、「海浜公園」もある。

これらの大自然のポイントが相互に作用し、一つの有機体として、偉大なる環境を創出しているのがこの加古川なのであり、我々は、この加古川を、大いなる日本ルネサンス、関西ルネサンスの中心拠点の一つとして、今後考えてゆかなければならないと思う。

一方、最近の加古川駅周辺には、大型百貨店が創られ、大型ホテルが創られ、大型書店が創られ、確実に快適な都市環境が創出されているようにみえる。今後は、さらに、こうした加古川の都市化が進むであろうと思うが、ここで、よくよく考えておかなければならないことが、加古川の独自の理念であり、加古川独自のオリジナリティーなのである。

加古川が、ルネサンス文化都市を目差してゆく以上、都市的快適さと、大自然の豊かな環境を、どうしても、融合、止揚してゆかなければならない。どちらか一つではなく、大自然に基盤を置きながらも、洗練された文化都市化をも、同時に行ってゆかなければならないのである。

これより、大いなるカントリー、快適なる文化都市加古川を、我々、加古川の市民の力を結集して創ってゆかなくてはならない。市民の市民たる所以は、己が住んでいる市に対して、常に関心を持ち、市政に積極的に参画し、一丸となって、新しい都市を建設してゆくことにあるのであり、かつてのギリシャのポリスにおいても、アテネの如く、そこに住む市民の積極的なる活動と誇りと未来への希望のビジョンを共有することによって、主体的に文化都市を創っていったのである。

かつて、アメリカの大統領ケネディは、就任演説に際して、「諸君が、国家に何をしてもらいたいかを願うのではなく、国家に対して何が出来るのかを問うて頂きたい。」を宣言されたが、まさしく、民主主義の真骨頂は、市民が市民の自主的な力によって自らの都市を創造してゆく自由にあるのであり、我々も、加古川市に何をしてもらいたいかを願うのではなく、加古川市に対して何が出来るのかを、真剣に自らに問い、深く思索し、それを実践していかなくてはならない。

その中から、新しきルネサンス文化都市加古川、新しき未来型文化都市加古川、日本ルネサンスの中心地にして、永遠の故郷加古川が誕生してゆくのである。

(天川貴之:JDR総合研究所代表・哲学者)

加古川を愛する一市民として

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