有用植物利用と健康(52)~トリカブト~
有用植物利用法(57)~トリカブト~
《参考:Wikipedia》
トリカブト(鳥兜・草鳥頭、学名:Aconitum)は、キンポウゲ科トリカブト属の総称である。有毒植物の一種として知られる。スミレと同じ「菫」と漢字で表記することもある。
ドクウツギやドクゼリと並んで日本三大有毒植物の一つとされ、トリカブトの仲間は日本には約30種が自生している。花の色は紫色のほか、白、黄色、ピンク色など。多くは多年草である。沢筋などの比較的湿気の多い場所を好む。
*トリカブトの名の由来は、花が古来の衣装である鳥兜・烏帽子に似ているからとも、鶏の鶏冠(とさか)に似ているからとも言われる。英名の “monkshood” は「僧侶のフード(かぶりもの)」の意味。
*花言葉:「人嫌い」・「復讐」など。
塊根を乾燥させたものは漢方薬や毒として用いられ、烏頭(うず)または附子(生薬名は「ぶし」、毒に使うときは「ぶす」)と呼ばれる。
本来、「附子」は球根の周りに付いている「子ども」の部分。中央部の「親」の部分は「烏頭(うず)」、子球のないものを「天雄(てんゆう)」と呼んでいたが、現在は附子以外のことばはほとんど用いられていない。俗に不美人のことを「ブス」というが、これはトリカブトの中毒で神経に障害が起き、顔の表情がおかしくなったのを指すという説もある。
*毒性
比較的有名な有毒植物。主な毒成分はジテルペン系アルカロイドのアコニチンで、他にメサコニチン、アコニン、ヒパコニチン (hypaconitine)、低毒性成分のアチシンのほか、ソンゴリンなどを全草(特に根)に含む。採集時期および地域によって毒の強さが異なるが、毒性の強弱にかかわらず野草を食用することは非常に危険である。
食べると嘔吐・呼吸困難、臓器不全などから死に至ることもある。経皮吸収・経粘膜吸収されるため、素手で触った場合は手洗いが推奨される。
経口から摂取後数十秒で死亡する即効性がある。半数致死量は0.2グラムから1グラム。トリカブトによる死因は、心室細動ないし心停止である。下痢は普通見られない。特異的療法も解毒剤もない。
芽吹きの頃にはニリンソウ、ゲンノショウコ、ヨモギ、モミジガサなどと外見が似ているため、誤食による中毒事故が起こる(死亡例もある)。
株によって、葉の切れ込み具合が異なる。蜜や花粉にも中毒例があるため、養蜂家はトリカブトが自生している地域では蜂蜜を採集しないか開花期を避ける。また、天然蜂蜜による中毒例が報告されている。
*狩猟・軍事利用
古来、毒矢に塗布するなどの方法で、狩猟・軍事目的で北東アジア・シベリア文化圏を中心に利用されてきた。アメリカのエスキモーもトリカブトの毒矢を使用したことが、1763年のペテルブルクへの報告で知られる。
*漢方薬
漢方ではトリカブト属の塊根を附子(ぶし)と称して薬用にする。本来は、塊根の子根(しこん)を附子と称するほか、「親」の部分は烏頭(うず)、また、子根の付かない単体の塊根を天雄(てんゆう)と称し、それぞれ運用法が違う。
強心作用や鎮痛作用があるほか、牛車腎気丸及び桂枝加朮附湯では皮膚温上昇作用、末梢血管拡張作用により血液循環の改善に有効である。
しかし、毒性が強いため、附子をそのまま生薬として用いることはほとんどなく、修治と呼ばれる弱毒処理が行われる。
*附子が配合されている漢方方剤の例
- 葛根加朮附湯
- 桂枝加朮附湯
- 桂枝加苓朮附湯
- 桂芍知母湯
- 芍薬甘草附子
- 麻黄附子細辛湯
- 真武湯
- 八味地黄丸
- 牛車腎気丸
- 四逆湯
*疑似一年草
トリカブト属のうち、レイジンソウ亜属 Subgen. Lycoctonum に属する種は多年草であるが、トリカブト亜属 Subgen. Aconitum に属する種は、多年草のなかの疑似一年草に分類される。地上部と地下の母根(塊根、「烏頭(うず)」)はその年の秋に枯死するが、母根から伸びた地下茎の先に子根(嬢根、「附子(ぶし、ぶす)」)ができ、その子根が母根から分離して越冬芽をもち、翌年に発芽し開花する。
地上部と地下の母根から見れば一年草であるが、子根が翌年にも生存するため、擬似一年草のカテゴリーにはいる。分離型地中植物とも呼ばれる。
*観賞用のトリカブト
ハナトリカブトは観賞用として栽培され、切花の状態で販売されている。しかし、その全草に毒性の強いメサコニチンが含まれて取り扱いには危険が伴うことから、子供やペットが触ったり口に入れたりするなどによる事故が起こらないよう、注意が必要になる。
*推理ものの小説、漫画、テレビドラマなどでは定番のアイテムである。
- 『東海道四谷怪談』 – お岩が飲まされた毒は附子であるとされている。
- 『修道士の頭巾』 – イギリスの歴史ミステリー『修道士カドフェル』シリーズの一つ。主人公が痛み止めの塗薬として調合したものが登場。タイトルの「MONK’S-HOOD」はトリカブトの英名である。
- 『附子』の名は小名狂言の演目名としても知られる。
- 『八つ墓村』 – 作中で金田一耕助は、八つ墓村に群生しているカブトニクが連続殺人に用いられたと推理した。
- 『ゴールデンカムイ』 – アイヌ民族の武器として登場。作中では矢じりにトリカブトの根を固めたものを装填して使っていた。
- 『琥珀色の遺言』 – 事件の発端となった影谷洸太郎氏殺害事件で、影谷氏がトリカブトの入った薬草茶を飲んで死亡した。
ソフィア