有用植物利用と健康(48)~クチナシ~

有用植物利用と健康(48)~クチナシ(薬効)~

クチナシ(梔子、巵子、支子)は、アカネ科クチナシ属の常緑低木である。庭先や鉢植えでよく見られる。乾燥果実は、生薬・漢方薬の原料(山梔子・梔子)となることをはじめ、着色料など様々な利用がある。

写真は山仲春男氏撮影「クチナシ」

《名称》

和名クチナシの語源には諸説ある。果実が熟しても裂開しないため、口がない実の意味から「口無し」という説。また、上部に残る萼を口(クチ)、細かい種子のある果実を梨(ナシ)とし、クチのある梨の意味であるとする説。他にはクチナワナシ(クチナワ=ヘビ、ナシ=果実のなる木)、よってヘビくらいしか食べない果実をつける木という意味からクチナシに変化したという説もある。

漢名(中国植物名)は山梔(さんし)である。日本では漢字で、ふつう「梔子」と書かれるが、実が裂開しないため「口無し」が正しいとする説もある

八重咲きの栽培品種が多く、別名ガーデニアともよばれる。花にはジャスミンに似た強い芳香があり、学名の種名 jasminoides は「ジャスミンのような」という意味がある

10 – 11月ころに熟した果実を採取し、天日または陰干しで乾燥処理したものは、山梔子(さんしし)または梔子(しし)とも称され、日本薬局方にも収録された生薬の一つである。漢方では、消炎、利尿、止血、鎮静、鎮痙(痙攣を鎮める)の目的で処方に配剤されるが、単独で用いられることはない。煎じて解熱、黄疸などに用いられる。黄連解毒湯、竜胆瀉肝湯、温清飲、五淋散などの漢方方剤に使われる。

民間療法では、1日量2 – 3グラムの乾燥果実を400 ccの水に入れて、とろ火で半量になるまで煎じて服用する用法が知られている。ただし、妊婦や、胃腸が冷えやすい人への服用は禁忌とされている

外用による民間療法では、打撲、捻挫や腰痛などに、乾燥果実(山梔子)5 – 6個の粉末(サンシシ末)に、同量の小麦粉を混ぜて酢で練り、ガーゼなどに厚く塗って冷湿布し、乾いたら交換するようにしておくと、熱を抑えて炎症が和らぐと言われる。これに、黄柏末(キハダ粉)を加えると、一層の効果があるとされる。ひび、しもやけには、熟した果実の皮をむき、患部にすり込む

《着色料》

奈良県の下池山古墳から出土した繊維片から、クチナシの色素成分が検出されるなど、日本における染色用色素としてのクチナシの利用は、遅くとも古墳時代にさかのぼる。

乾燥果実の粉末は奈良時代から使われ、平安時代には十二単など衣装の染色で支子色と呼ばれた。江戸時代には「口無し」から不言色とも記されている。

現代でも無害の天然色素として、正月料理の栗金団をはじめ、料理の着色料としても使われている。食品に用いられるものには、サツマイモや栗、和菓子、たくあんなどを黄色若しくは青色に染めるのに用いられる。大分県臼杵の郷土料理・黄飯や、静岡県藤枝の染飯(そめいい)も、色づけと香りづけにクチナシの実が利用される。クチナシの果実に含まれる成分、クロシンはサフランの色素の成分でもある。

《食用》

*クチナシの花は食用にもでき、萼を取り除いて軽く茹で、三杯酢や甘煮などに調理できる

*黄飯(きいはん、おうはん、きめし)は、クチナシの実で色を付けた黄色い飯。郷土料理。

愛知県名古屋市周辺(きいはん)、大分県臼杵市(おうはん)、静岡県東伊豆町稲取(きめし)。

《文化》

ジンチョウゲ、キンモクセイと並んで「三大芳香花」「三大芳香樹」「三大香木」の一つに数えられる植物である。

足つき将棋盤や碁盤の足の造形は、クチナシの稜のある果実を象っている。「打ち手は無言、第三者は勝負に口出し無用」、すなわち「口無し」という意味がこめられている

*花言葉は、「優雅」「喜びを運ぶ」「幸せを運ぶ」「清潔」「私は幸せ」「胸に秘めた愛」。

ソフィア

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