有用植物利用と健康(39)~コブシ~

有用植物利用と健康(39)~コブシ~

和名コブシの由来については定説がない。つぼみが開く前、開花の様子が小さな子どもの握りこぶしのように見えるという説。つぼみの形を(子供の)握りこぶしに見立てたとする説。あるいは、果実(集合果)の形がでこぼこしていて、(子供の)握りこぶしに見立てたとする説もある。和名「コブシ」が、そのまま英名・学名になっている。

中国植物名(漢名)は日本辛夷(にほんしんい)。日本では「辛夷」という漢字を当てて「コブシ」と読むが、これは花のつぼみを乾燥させた生薬名が辛夷(しんい)であるためである。中国の辛夷は、ハクモクレン(白木蓮)、もしくはモクレン(木蓮)のことを指し、コブシの漢名とするのは誤りとされている

*別名ヤマアララギコブシハジカミともよばれる

昔はコブシの花の時期に、稲の苗代や種まきすることからタウチザクラ(田打桜)、タネマキザクラ(種まき桜)とよばれた。アイヌ地方ではオマウクシニ、オプケニと呼ばれる。それぞれ、アイヌの言葉で「良い匂いを出す木」「放屁する木」という意味を持つ。遠見だと桜に似ていること、花を咲かせる季節が桜より早いことから、ヒキザクラ、ヤチザクラ、シキザクラなどと呼ばれる。これらの呼称は北海道、松前地方を中心に使われる。一方、北海道のコブシは「キタコブシ」と呼ばれることもある

*分布・生育地

日本の北海道・本州・四国・九州北部、および朝鮮の済州島に分布する。日本特産で、山地や丘陵の湿った平地に好んで生えている。栽培可能地は北海道から九州までの全域で、春を告げる花木として庭や公園にもよく植えられる

*形態・生態

落葉広葉樹の小高木から大高木。 樹高は5 – 20メートル 、木の幹は1本立ちで直立し、直径はおおむね30 – 60センチメートル  に達する。生長は割合早いほうで、枝も均整に出て、整った円錐形から卵形の樹形になる。ただし、混生するものは枝ぶりが乱れる。樹皮は灰白色で、表面はややなめらか。若い樹皮は光の当たり具合で白っぽく見える。一年枝は、緑色から紫色を帯び、枝を一周する白っぽい托葉痕が目立つ。枝は太いが折れやすい。

葉は揉むと強い香りを発する

花期は早春(3 – 4月)とモクレンの仲間では早咲きの部類で、葉に先だって小枝の先に、ほのかな芳香がある直径6 – 10 cmの花を1個咲かせる。花は純白で、花弁の基部は淡紅色を帯びる。ふつう、花の基部に小型の1枚の若葉がつくのが特徴で、よく似たタムシバにはこれが付かないので見分けるポイントになる。花のほか、枝にも芳香があり、枝を燃やしても香りを放出する。開花すると、数日ほどで花弁はばらけてしまう。花芽は大きくて、長さ2 – 2.5 cmの長卵形で枝の先につく。

*利用

樹の形が美しく整っていることから、庭木・街路樹として植栽されるほか、接ぎ木の台木にされる。特に庭木にすると、コブシの大振りで白い花がサクラより早く咲き始めて、春の訪れを楽しめる庭となる。建材として、樹皮を付けたまま茶室の柱に用いられることがある。

*薬用

早春に採取した花の蕾を風通しのよい場所または、天日で乾かしたものは、辛夷(しんい)という生薬になり、漢方薬に配合される。中国ではモクレン、ハクモクレン、それぞれの蕾の薬物名を辛夷としている。薬効は、鎮痛、鎮静、鼻炎、蓄膿症、頭痛、めまいに効能があるとされる。民間では、1日量2 – 10グラムの辛夷を300 – 400 ccの水で半量になるまで煎じ、1日3回に分けて服用する用法が知られている。蓄膿症や花粉症の鼻づまりに、よく効くという意見もある。また、乾燥した辛夷を粉末にして、1回0.1 – 0.2グラムを白湯で服用してもよいともいわれている。身体を温める薬草のため、多量に飲むとめまいや充血を起こすこともある

蕾(辛夷)は芳香料になる。また花は、香水の原料にもなる。

*食用・飲用

かつてアイヌが樹皮をお茶のように使って飲用したとも言われている。ただし、樹皮は有毒なので注意を要する。花は砂糖漬けにしたり、薄く衣をつけて天ぷらに調理されたりもする。赤い果実などを集めて焼酎などに漬けておくと、一風変わった香りの果実酒を作ることができる

*文化・文学

古来より農民との縁が深く、コブシの花の咲き具合に応じて種子を撒くなど、農作業の指標として用いられてきた。春早く咲いて目立つことから、北海道や東北地方、信越地方などで、その年の田植えをはじめるので、「満作」あるいは「田打ち桜」「田植え桜」「種まきザクラ」ともよばれた。栃木県ではコブシが花を咲かせるのを目安に、サトイモの植えつけに着手する。それゆえ「芋植え花」と呼ばれる。さらに、コブシの花の咲き具合を見て、農民はその年の豊作を占ったという

コブシの花言葉は、「友情」。

( 参考:Wikipedia  より)

写真上部一枚目:宮川直遠氏撮影「コブシの花」(「緑の環境委員会」より)

ソフィア

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