有用植物利用と健康(34)~西洋タンポポ①~
有用植物利用と健康(34)~西洋タンポポ ①~
ヨーロッパまたは、北半球の温暖地域が原産といわれる。北アメリカ、南アメリカ、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、インド、日本に外来種として 移入分布する。
*形態
あまり季節を問わず、黄色い舌状花を長い期間にわたって咲かせる。萼のように見える部分(総苞片)が開花時に反り返ることで、花に沿って固く閉じる在来種とは区別できる。ただし、在来種も花の盛りを過ぎると総苞が反り返るので注意を要する。葉は鋸歯状や羽状に深裂するが、変化が大きい。生育型は、ロゼット型となる。
葉や茎を切ると白いゴム質の乳液が分泌され、これによって虫に食べられるのを防いでいる。アレロパシー作用(他感作用)をもつといわれている。
根茎による繁殖力が強く、どの部分の切片からも出芽する。現在ではほぼ日本全国に広がっているが、古くからの田園風景の残る地域では在来種のタンポポが勢力を持っている。そのため、都市化の指標生物になるといわれている。
*分類
ヨーロッパのタンポポの分類には諸説あり、タンポポ属だけでも種数は400種とも2000種ともいわれている。また、最近になって日本では、セイヨウタンポポを含む外来タンポポと在来タンポポの雑種が発見され、新たな問題として注目されている。日本のセイヨウタンポポの8割以上は在来タンポポとの雑種との報告がある。このような雑種では、総苞は中途半端に反り返るともいわれ、その区別は簡単ではない。
こうした分類の混乱や交雑の問題から、正確な種の実態はまだよくわかっておらず、これまでセイヨウタンポポとされていたものでも実際は複数の種が含まれている可能性が高い。そのため、近年は外来タンポポ群(Taraxacum spp.)としてひとくくりに扱われることが多い。
-
*外来種問題
当初は外来タンポポが日本の在来タンポポを駆逐していると考えられていたが、多くの場合、外来タンポポと在来タンポポは住み分けていることがわかった。二次林では在来タンポポの割合が多く、造成地や市街地では雑種タンポポがほとんどを占めるという分布傾向がある。しかし、自然度の高い場所に外来タンポポが侵入した場合、在来のタンポポ類と競合・駆逐することが危惧され、北海道礼文島、島根県隠岐諸島、長野県上高地では駆除が行われている。
ソフィア