有用植物利用と健康(32)~桃~

有用植物利用と健康(32)~モモ(桃)~

*利用法

果実は食用、花は観賞され、庭木として植栽に用いられたり、あるいは華道で切り花として用いられる。材は割れにくく丈夫であるため、箸などに利用されている。樹皮の煎汁は草木染めの染料として用いられる事がある。

栽培中、病害虫に侵されやすい果物であるため、袋をかけて保護しなければならない手間の掛かる作物である。また、痛みやすく収穫後すぐに軟らかくなるため、賞味期間も短い。生食する他、ジュース(ネクター)や、シロップ漬けにした缶詰も良く見られる。

種子の内核は「桃核(とうかく)」あるいは「桃仁(とうにん)」と呼ばれる。漢方においては血行を改善する薬として婦人病などに用いられる。また、つぼみは「白桃花(はくとうか)」と呼ばれ、利尿薬、便秘薬に使われる。湯に入れた桃葉湯は、あせもなど皮膚の炎症に効くとされる。ただし、乾燥していない葉は青酸化合物を含むので換気に十分注意しなければならない。

《桃の栄養と効能》

1、桃にはペクチンという栄養成分が含まれている。

ペクチンとは、食物繊維の一種で、腸内の乳酸菌を増やし、腸の調子を整える働きがある。そのため、便秘や下痢を予防する効能が期待できる。

また、ペクチンにはコレステロール値を下げる、血糖値の上昇を抑えるなどの効能もある。

2、桃にはカリウムも含まれている。

カリウムとは、ミネラルに分類される栄養素の一種で、細胞内の水分量を調節するなどの働きがある。

カリウムには体内の余計な塩分を排出する働きがあり、血圧の安定、むくみの解消、筋肉の収縮を正常に行うなどの効能がある。

3、カテキン – 老化防止やがんを予防する効能

桃にはカテキンも含まれる。

カテキンは緑茶などに多く含まれる栄養成分で、強い抗酸化作用を持つ。カテキンには、老化防止やがん予防、免疫力を高めるなどの効能がある。

カテキンにはまた、血糖値の上昇を抑える効果、脂質の吸収を抑制する働き、肌老化を防ぐ効能などが期待される。

4、鉄分やマグネシウムも – 貧血の予防、冷え性の改善

桃には鉄分やマグネシウムといった栄養も含まれる。

鉄分とマグネシウムはともに、ミネラルに分類される栄養素で、鉄分は酸素を全身に運ぶ働きが、マグネシウムは様々な生理機能に必須の栄養素である。

桃に含まれるや鉄分マグネシウムを摂ることで、貧血や冷え性の改善などの効能が期待できまる。桃はまた、他の果物に比べ、カラダを温める作用があるので、こちらも冷え性対策には有効と言える。

エネルギー 水分 タンパク質 脂質 炭水化物 食物繊維 ナトリウム
40kcal 88.7g 0.6g 0.1g 10.2g 1.3g 1mg
カリウム カルシウム マグネシウム リン 亜鉛
180mg 4mg 7mg 18mg 0.1mg 0.1mg 0.05mg
マンガン ビタミンA ビタミンD ビタミンE ビタミンK ビタミンB1 ビタミンB2
0.04mg Tr 0μg 0.7mg 0μg 0.01mg 0.01mg
ナイアシン ビタミンB6 ビタミンB12 葉酸 パントテン酸 ビオチン ビタミンC
0.6mg 0.02mg 0μg 5μg 0.13mg 0.3μg 8mg

桃(生)の100gあたりの成分表(Tr:微量、-:未測定「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より)

5、桃の種は生薬として使われている

栄養豊富で様々な効能がある桃であるが、桃の種は「桃仁(トウニン)」という生薬として使われている。

桃仁は、桃の種の核を取り出して日干ししたもので、血の巡を良くする働きがある。漢方は様々な生薬を組み合わせたものであるが、桃仁は桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)、桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)などの漢方に使われている。

また、桃仁には、女性ホルモンの乱れを正常にしたり、月経不順や便秘を解消する効能なども期待されている。

6、バランスのよい栄養 女性に優しい効能

桃には、ずば抜けて多く含まれている栄養は特にない。ただし、ペクチンやカリウム、カテキン、鉄分、マグネシウムなど様々な栄養がバランスよく含まれている果物と言える。

効能で見ると、便秘やむくみ、冷え性、生薬では女性ホルモンの正常化や月経不順の解消など、全体的に女性に優しい効能が目立つ。

特に、桃の旬である夏は、冷えやむくみがおきやすいので、こうした症状にお悩みの方には、おすすめの食材である。桃はカラダを温める作用もあるので、夏バテの予防にもおすすめである。

ソフィア

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        【参考資料】:「ハイム花の図鑑」より「モモ(桃)」

モモ(桃)

和 名 モモ
花言葉 「私はあなたのとりこ」、「気立てのよさ」、「恋のとりこ」、「チャーミング」。フランス:「辛抱」「忍耐」
英語名 peach
別 名 ハナモモ(花桃)
分 類 バラ科 モモ属
原産地 中国
花 色 紅色・ピンク・白色
花 期 3月下旬~4月上旬
メ モ *桃の実の花言葉は「天下無敵」

中国では桃は悪い気を払い、不老長寿を与えるとされてきたため、お祝い事には桃の実を食べる習慣があります。日本でも桃の節句には花を飾ります。言い伝えでは、イザナギノミコトが鬼に桃の実を投げて追い払ったことから「天下無敵」がつけられたそうです。

そのあとは、甘い品種が渡ってきたことで、品種改良が盛んに行われ、観賞用の花桃と食用の実桃に分けられました。

*モモの語源

モモの語源には諸説あり、「真実(まみ)」より転じたとする説、実の色から「燃実(もえみ)」より転じたとする説、多くの実をつけることから「百(もも)」とする説などがあります。漢字の「桃」は木偏に兆(きざし)と書かれるが、古い桃の品種は核(種子)が簡単に割れたので、2つに割れることはめでたい兆しとされ、「桃」の字が作られたとされています。

英語圏においては、傷みやすいが美しく美味しい果物から古い俗語で「若く魅力的な娘」を表し、そこから「ふしだら女」「(複数形で)乳房」などの意味にも転じている。

英名ピーチ(Peach)は“ペルシア”が語源で、ラテン語のpersicum malum(ペルシアの林檎)から来ています。

*風習・伝説・行事

1、中国での風習・伝説・年中行事など

中国において桃は仙木・仙果(神仙に力を与える樹木・果実の意)と呼ばれ、昔から邪気を祓い不老長寿を与える植物・果物として親しまれている。桃の木で作られた弓矢を射ることは悪鬼除けの、桃の枝を畑に挿すことは虫除けのまじないとなる。戸口や門に赤い紙でできた春聯(しゅんれん)が飾られるが、春聯は別名で桃符(とうふ)ともよばれ、本来は桃の木から作られた薄い板でできていた

桃の実は長寿を示す吉祥図案であり、祝い事の際には桃の実をかたどった練り餡入りの饅頭菓子・寿桃(ショウタオ、繁体字: 壽桃、簡体字: 寿桃、拼音: shòutáo)を食べる習慣がある。寿桃は日本でも桃饅頭(ももまんじゅう)の名で知られており、中華料理店で食べることができる。寿命をつかさどる女神の西王母とも結び付けられ、魏晋南北朝時代に成立した漢武故事(中国語版)などの志怪小説では、前漢の武帝が西王母の訪問を受け、三千年に一度実をつける不老長生の仙桃を授かったという描写がある。さらに後代に成立した四大奇書のひとつ、『西遊記』の主人公孫悟空は、西王母が開く蟠桃会に供される不老不死の仙桃を盗み食いしている。

2、日本での風習・伝説・年中行事など

日本においても中国と同様、古くから桃には邪気を祓う霊力があると考えられていた。『古事記』では、黄泉の国でイザナミの追手から逃げるイザナギが、黄泉比良坂に辿り着いた際、そこにあった桃の実を投げつけて、追手を退散させて逃げ延びることに成功した。イザナギはその功を称え、桃に意富加牟豆美命(おおかむづみのみこと)の名を与えたという。また、『桃太郎』は、桃から生まれた男児が長じて鬼を退治する民話である。3月3日の桃の節句は、桃の加護によって女児の健やかな成長を祈る行事である。桃の花を飾って祈願する風習は、女子が妊娠を希望して子供を授かり、その子の誕生を祈ることも意味した。桃の核(種子)の中心にある空間は、竹の桿(かん)の中空と同様に、神の居場所と考えられていた

kumanozakura

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