杉本25)読書感想記『短編物語 それぞれの旅』・・・16号(倶楽部便り)

                  読書感想記 

                                           杉本知瑛子(H.9、文・美卒)

    『短編物語 それぞれの旅』(白石常介著・角川文化振興財団・2015.8.10 発行)

        

今年の8月9日に台湾の白石副会長様が大阪に来られた時、会報第15号でご紹介させて頂いたご著書を3冊手渡して下さいました。ご子息が結婚して大阪にお住まいとのことで、ご家族とのお食事会の前に少し時間をお取り下さりご本を頂きました。

今回の内容は短編ばかりが11編で読みやすく、すぐさま帰りのバスの中で読み始めたのですが、

まずその中に含まれている“第9編「会計事務所の独り言」”には驚きました。もうバスの中で一気に読んでしまいました。

会計事務所やその業務内容が素人にもよく分かるよう記述されています。例えば「...職員は台湾全土で数千名、顧客は台湾の企業のみならず欧米系企業や日系企業など一万社近く。これだけ大きいと、会計事務所として法的に対応できるあらゆる業務のエキスパートがそろっている。日系企業担当グループも然り。200名規模で、会社設立登記、...」で始まり、白石様特有の多種多様な顧客との応対(会話)に面白い心の声を加えて...国際的な経営に関する難しい内容(特に節税に関することなど)なのに、読者は全く退屈することなくゲラゲラ笑ったり感心したりしながら、むしろ途中で止められなくなり、そして...最後には深いため息が...。

自分の知らない世界を垣間見ることほど楽しいことはないようです。

それから最初の“第1編「CherrieとSweetieの日本珍道中〈札幌・富良野〉」”に移り、かわいい、かわいい、おちゃめなワンちゃん達と再会しました。

今回のご著書の表表紙イラストの元気さいっぱい、かわいらしさ120%のニコニコ顔のワンちゃん達と、裏表紙の美しい大自然の中で、移り行く時の流れに静かに身を任せているかのようなワンちゃん達の後ろ姿に、この上なく楽しい人生と共にそれらを超越したかのような(人生を達観したかのような)著者の魂を感じてしまいました。

特に裏表紙は見るなり心の中に静かな音楽が溢れ出しました。

(Schumann:Liederkreisより「In der Fremde」)

(シューマン:リーダークライスより「異郷にて」)でしたが。

ひととき、私の中に安らぎのときを感じ、...それは優しくささやきながらゆったりと流れていました。

 

角川出版での既発行のご著書、初回は日本各地の酒蔵を巡りながらの日本酒の詳細な説明でしたが、専門用語の理解に少し時間を要し、また2冊目はゲラゲラ笑い転げるほど面白いゴルフの本でしたが、こちらも同様に少し時間を要しました。しかし、今回は読みにくいところ全くなし!

特に“第5編「羽ばたけ若者」”は読んでからアッと驚きました。実在の方(たしか台湾で大成功を遂げられた方)をモデルにして書かれているようでした(初回のご本『CherrieとSweetieの日本酒珍道中・人生街道』の中で見たようなお名前が数名出ていましたから)。

それでも、これもゲラゲラ笑ったり感心したりで、最後まで一気読みでした。

この物語の主人公「荘ぼう」(荘司さん)もきっと天才といえるのでしょう。

これが全てノンフィクションなら、台湾まで行ってお目にかかってみたくなるような人物でした。

ところで、8月に手渡して頂いたこのご本の感想記を今回の会報に掲載させて頂こうと、改めて全ての文を読み返しました。短編それぞれに込められた著者のメッセージを確認しながら読んだつもりだったのですが、...何かおかしい...。

書名『短編物語 それぞれの旅』から、無意識のうちにシューベルトの『冬の旅』での考察:一曲一曲のテーマだけでなく歌曲集全体を考える時、シューベルトからのメッセージは個々のテーマとは全く性質の異なったものとなっていた、ということ:の影響を受けたのか、このたびの『短編物語 それぞれの旅』も深読みしたくなってしまったのです。

「人はそれぞれいろいろなことを経験し、困難を乗り越えていきます。人生の旅路には終わりはあ

りません。たとえ終焉しても魂は体を離れて、また新たな旅が始まるのです。それぞれの旅...、

ばらばらのようで何となくどこかでつながっているような、そんな気がしてなりません。...」

「...人間の価値は...まず、そこにいるだけで、存在するだけで、価値があるのです。...拙著は、大自然の息吹を肌で感じ、...人間らしさを取り戻す心の旅はいいものであること、無限の可能性を持つ若者の未来を奪う戦争はいつの時代でも悲劇であること、若者の活躍の場は日本国内だけではないこと、お金では買えないものもあること、日本の良き伝統は素晴らしいものであること、相手の立場に立って考えることも必要であることなど、それぞれにメッセージを込めています。...」(「あとがき」より)

そして、この一編一編のメルヒェンのようなやさしい愛に満ちた短編集から読者への最後のメッセージは、...ここで感想文が書けなくなってしまい、頂いてから今までに書いた最初の感想だけを繋ぎ合わせてこの急場をしのぐ事に致しました。

うす紅色のさくらに向かい  四季の始まり巡る春に感謝し

一瞬きらめく夜空の花火と  優しいホタルのほのかな灯り

真っ赤に燃える夕焼け空に  過ぎ去りし日の郷愁を覚え

しんしんと降る白い大地に  ひとり佇み我何想う

 

( 『 短編物語 それぞれの旅 』「あとがき」より )

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