塩野18 )私の山歩き報告記(2)~熊野古道小辺(こへ)路(ち)~・40号

私の山歩き報告記(2)熊野古道小辺(こへ)路(ち)の山歩き報告記

                          塩野秀作(‘76商学部卒 )

熊野古道と呼ばれるのは、熊野三山への参詣道のことで、中辺路、伊勢路、小辺路、紀伊路、大辺路の5つのコースがある。熊野三山とは熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社の3つの神社を指す。全国に多く存在する熊野神社の総本社である。熊野古道は一度歩いてみたいと思っていた。その中で、今回は小辺路を選んだ。高野山と熊野本宮大社の二大聖地を最短距離68kmで結び、標高1000mを超える4つの峠を越えていく「修験道の路」である。健脚者なら2泊3日、通常は3泊4日で歩く。小辺路の通行する十津川村、野迫川村の地方に関する資料には8世紀に遡る記載が見られる。生活道としては江戸時代も利用されてきたようだが、近世以降に庶民の参詣道として利用されてきた。

時期は、9月17日~20日に決め、テント泊か、小屋泊を当初考えていたが、トイレ、水補給、体洗浄、洗濯の問題は大きい。思い悩んだ結果、民宿泊に決め、3カ所を予約した。これで、大丈夫と思っていたら、台風14号が日本にそれも紀伊半島に接近中だ。

第1日目は、天気小雨、高野山を8時出発し大股まで歩く。 薄峠から下って御殿川の橋を渡り大滝集落に着く。この集落には、登山者のためのトイレが設置と紹介されており、民家の敷地内でトイレを発見。その敷地内に居られた方にトイレを借りる旨伝え使用。トイレ内は大変清潔に保たれ、毎日清掃されているようで感心した。使用後にお礼を述べると、その方が、小辺路ガイドを15年間務めた中谷さんだと分かり、お話を伺った。ご本人の話では、小辺路ガイド時に大股までトイレがなく女性の方が困っていたので、補助金を得て自宅敷地内に登山者のために公衆トイレを建てられた。「熊避けの鈴」は持っているかと聞かれて、「持っていますが、大股から付けます。」と言うと「もう熊が出るぞ。すぐに鈴をつけなさい。それから、湿ったところには毒蛇がいるぞ。杖のようなもので、払いなさい。レインウェアを林道の東屋で着た方が良い。」と次々とアドバイスをしていただいた。数年前に足を痛めてガイドは辞めたそうだ。そして、私が小辺路の歴史にも関心があると伝えると、ご本人が作られた地元の歴史や案内が記載された「小辺路ガイドマニュアル」1冊を頂戴した。いろいろと親切に教えていただいたのでお礼を述べて「熊避けの鈴」をリュックに付けて出発。

天気は、小雨です。水ケ峰峠では、体を動かされるような強風が吹いていた。熊出没の看板が数か所にあった。 東屋でおにぎり2個を食べて、レインウェアを装着した。20分間動かずに止まっているとだんだんと寒くなってきた。レインウェア着用で低体温症防止にもなることが分かった。先人の知恵ですね。 台風が来る明日は、歩けるか心配だ。スタートが早かったので、大股には予定時刻よりも早く着きそうです。 急坂のため両足の親指に圧がかかり痛いので、少しゆっくり歩いた。時間調整にもなる。 大股登山口に14時24分到着。公衆トイレがあり、その前には登山届箱がある。明日の登山届を提出し、公衆電話で民宿に到着を連絡。すぐに車でピックアップしてもらい民宿かわらび荘に14時50分到着。

夕食まで時間あるので、ホテルのせ川の温泉に行った。通常600円のところ、400円で利用できた。やはり温泉はいいですね。温まり方が違います。民宿の主人が往復を車で運んでくれた。

洗濯機は無料で利用可。猪鍋、アマゴ焼きが美味でした。 夜の天気予報やニュースで、台風14号が、明日の正午頃、紀伊半島南部直撃とのこと。民宿のご主人やホテルのせ川の方、同宿の土木関係者の方から、明日、伯母子岳への登頂は、大変危険なので止めるべきと警告を受ける。断念して止めるか、最終判断は明朝の天気予報次第となった。

熊野古道小辺路3泊4日の2日目です。 前日夜までの予想では、正午頃に台風14号が伯母子岳付近通過予想のため、民宿のご主人、温泉の入浴に行ったホテル支配人が、強風、大雨の中、台風接近中の登山は危険と警告された。 次の宿泊先近くの5km離れたバス停まで日本一長い路線の奈良交通バスで行くことを提案された。数km離れたバス停まで車で送ってくれるという。しかし、バスが動いていることが前提だ。それも駄目なら高野山まで車で送ってくれるという。大変親切でありがたいことだ。

一夜明け、台風の進路が少し南側となって速度が速くなり、お昼には伊勢湾に抜けるし強い雨雲が台風の後ろにはない予想。これなら伯母子岳1,344mに登山可能ということになった。

宿を8時過ぎ発。天気は大雨。車で大股登山口まで送って頂いた。登山口8時12分発。萱小屋までが結構急坂でした。到着すると誰も人はいませんが、内部の撮影をさせて頂く。お礼に小銭を寄付。小屋は個人所有、好意で提供しているらしい。桧峠、伯母子岳山頂では霧で視界悪く景色は全く見えず、風速10~15m/秒程度で思ったよりも弱かった。伯母子峠への道は通行止めで山頂から迂回路の指示どおり進む。従来の登山道と合流した地点で、弁当を食する。 登山口までのルートは結構ハードでした。下り坂と思っていたら、途中から数度登り坂になったりする。急坂か続いて両足の親指の爪の部分が痛くて歩くスピードが急激にダウン。三浦口側の大股登山口に15時50分到着。民宿に連絡し、15分程度歩くと車でピックアップしてもらい、「農家民宿山本」に16時23分到着。

民宿には、ご主人手作りの水車があり、癒されました。奥さんの野菜を多く取り入れた手料理は最高に美味しかった。お風呂もトイレもきれい。夕食前に洗濯を済ませ、乾燥機はないので除湿機で乾燥させた。

熊野古道小辺路3日目、台風一過で今日は晴天。三浦口→三浦峠→西中バス停の行程です。 同宿の夫婦が明日は、朝7時に出発し、西中バス停14時発のバスに乗り、同じ民宿まで行くと言うので、私も泊まりますが、迎えをお願いしているので、それに同乗すれば、8時出発で大丈夫と提案して、一緒に出発することにした。 「行者民宿太陽の湯」の方が西中バス停まで迎えに来てくれる。今日は、距離は一番短いので、少し気は楽です。 農家民宿山本さんのご主人に三浦口の登山口まで車で送ってもらった。

吊り橋の船渡橋を渡る。下は金網状のスケルトンで高所恐怖症の人は苦手でしょうね。三浦峠1060mまで一気に登る。途中、湧水を飲み、空きのペットボトルに入れる。やはり水道水と違って美味しい。 昨夜、伯母子峠の避難小屋に宿泊したという青年二人が別々の地点で追い抜いて行った。さすが若いだけあって足取りも軽やかです。大病した後遺症の左足首の不自由さでなかなかスピードが上がりません。とにかく、三浦峠へ足を進める。峠と言うが、頂上です。名前が不思議ですね。 下り坂は、2日間の下り坂で痛めた両足の親指がまた悲鳴を上げ始めた。ゆっくり歩きます。これは、痛み耐久訓練かと思い、忍耐、忍耐。西中バス停まではどちらにしても歩かざるを得ません。ようやく西中バス停に14時44分到着。

30分遅れて、後ろのご夫婦が到着。キノコ取りをしながら、歩いていたので、遅くなったとのことでした。民宿に、西中バス停に到着した旨を告げ出迎えお願いの電話をしてピックアップしてもらう。

3泊目は、十津川温泉「行者民宿太陽の湯」に宿泊。 夕食は、ぼたん鍋は、猪肉、白菜が豊富で鹿肉、鱒寿司、マグロ刺身、アマゴ焼きなどその他の料理も豊富で美味でした。風呂は3つあり、もちろん源泉掛け流しの温泉です。食事の部屋にマッサージチェアがあり、無料で使い放題で山歩きの疲れた体を癒した。温泉に入ると肌がすべすべになる。そして女将さんの気遣いが、最高に良かった。

明治22(1889)年8月18日~20日の未曽有の豪雨により426戸流失、半壊家屋184戸、家屋の被害は村全体の26%、田畑50%に及び、山林の被害も甚大であった。その後、生活手段を失った十津川村民640戸、2661人が北海道に移住した。平成3年10月現在の北海道新十津川町の人口6,515人、十津川村3,166人と人口では上回っている。

いよいよ熊野古道小辺路4日目(十津川温泉→熊野本宮大社) 5時34分に出発。天気曇り空。 赤い橋を渡って果無峠登山口から一路、果無峠へ。 急坂が予想通りきつい。4日間で一番標高差があります。上り1246m、下り1342m。 果無峠は、まだかまだかと思いつつ果て無しに続くようです。これで名前がついたのか? 8時54分峠到着。民宿で用意された朝食のおにぎり弁当をいただく。お腹がすいていたので美味しい。峠を過ぎると、今度は延々と下りが続く。11時50分道の駅に立ち寄り、休憩スペースにて軽く昼飯。

熊野本宮大社裏門に13時40分着。 本殿にお参りし無事に3泊4日のロングトレイルが終了したことのお礼を申し述べた。熊野本宮大社の創建は、崇神天皇65年と伝えられている。熊野川中洲にもともと上四社、中四社、下四社の拝殿や様々な社殿が立ち並んでいたが、明治22年8月に発生した大規模な洪水により、上四社以外の建物はすべて流失。残された上四社を現在地に移転したらしい。天皇家にとっては、由緒ある神社で歴代の天皇は熊野詣をしている。

撮影禁止の本宮大社本殿には塀の外からのお参りでした。日本を統一した神武天皇を大和橿原まで先導したという八咫烏(ヤタガラス)の御影石の彫刻や亀石があった。高さ33.9m幅42mの日本一大きな鳥居が大斎原(おおゆのはら 流失前の社殿のあった場所)にあった。現在の社殿と離れているのは、社殿が流失し、移転したためである。

本宮大社前バス停14時37分発の白浜空港行バスでJR紀伊田辺駅へ。特急くろしお28号16時32分乗車。18時33分天王寺駅着。いろいろと大変でしたが 無事踏破し帰宅できて嬉しい。感謝。

(塩野香料㈱社長、大阪慶應倶楽部副会長)

                     

水ヶ峰            大滝集落の公衆トイレ         十津川村

       

小辺路地図(熊出没注意)          十津川温泉      果無集落から熊野川を望む

           

熊野川         ヤタガラス       熊野本宮大社    熊野本宮大社鳥居

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