ソフィアさんちのチルちゃんと僕(93)~世阿弥と福澤諭吉(4-5)~
《5、世阿弥は難しい芸術論を、それこそ子供にも分かりやすいように「花」にたとえて著している。
『風姿花伝』の成立は1,400年(最初の3つ)、“能という芸術の衰退することを心配して、能を継承する子孫への教訓として”書き記したものである。
福澤先生は明治初期にやはり、それこそ子供にも分かりやすいように平易な文体と明快な論理で新時代の指導原理を説いた啓蒙書『学問のススメ』を出版された。
大きく時代はかけ離れていても、また国家像と芸道という違いはあれどもそれぞれの未来を見つめる眼差しは同じものではなかったか。
*『風姿花伝』の「第七 別紙口伝」に記されてある下記の文章を追記する。
~能を極めつくしてみれば、花という特殊なものが別個に存在するわけではなく、能の奥義に達し、あらゆる場合に珍しさを生み出す道理を自覚し身につけることのほかに花というものはありえないのである。~
この「別紙口伝」は、~我が家の大事な教えであり、一代の中に一人しか相伝しないほど重要な秘伝である。たとえわが子であったとしても、それだけの才能のないものには伝えるべきではない。
「家といっても、血統や家柄ではない。芸道の正しい伝承がなされることが家なのである。
~芸道を知るということが真の後継者の資格であるのだ」という言葉がある。
この「別紙口伝」こそは、芸術家の理想とする妙なる花を獲得しうる教えであるはずである。
(完)*(杉本知瑛子:元声楽家・杉本知瑛子ピアノ声楽研究所)》
写真:松村隆太郎氏撮影 「カワセミの飛翔」(「ハイムの蝶百科図鑑」より)