ソフィアさんちのチルちゃんと僕(87)~世阿弥と福澤諭吉(3-5)~
「観阿弥さんも世阿弥さんもすごいんだね。僕、ことばが分からなくても静かに聞いているよ。」
《5、ドニゼッティ作曲『ランメルモールのルチア』は、スコットランドを舞台としたウォルター・スコットの歴史小説をもとに、政略結婚やかなわぬ恋が描かれた作品である。
ルチアは悲しみと絶望の余り婚礼の夜新郎アルトゥーロを刺し殺し発狂して、最後には死んでしまうのであるが、『~ルチア』はその時代の流行の頂点の作品であり、現代まで残った数少ないコロラトゥーラソプラノの名曲(mad scene)を持つオペラでもある。
(注)
*Gaetano Donizetti(1797~1848) :『Lucia di Lammermoor』第3幕第2場「mad scene」 ~Il dolce suono~
(ドニゼッティ:『ランメルモールのルチア』第3幕第2場「狂乱の場」 ~やさしい声が聞こえる~ )
*世阿弥(1363~1444):1400年4月13日『風姿花伝』(「第三 問答条々」まで成る。あわせて、申楽伝説を『風姿花伝』の一部(「神儀」)としてまとめる。
*コロラトゥーラ(coloratura):オペラや歌曲において、早いフレーズの中に装飾を施し華やかにしている音節のこと。
これが使われている曲の中で特に有名なものとしては、モーツァルトの歌劇『魔笛』における第2幕の夜の女王(ソプラノ)によるアリア「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」がある。ロッシーニの歌劇『セビリアの理髪師』第1幕第2場でロジーナ(メゾ・ソプラノ)が歌う「今の歌声は (Una voce poco fa) 」も有名。
19世紀前半になってイタリアで流行した、このような「狂乱の場」のように、現実でないもの、ロマンティックなもの、幻想的なものが、日本では能楽(申楽)の重要な部分をしめる「幽玄美」(夢幻能的全体演劇)として14・5世紀には、世阿弥により完成していたのである。》