天川17)和歌における言霊(ロゴス)の真義について(1)・28号

~短歌の新世紀を拓く~

              天川貴之(91、法・法律卒)

          

第一節   和歌と心境について

第二節   和歌と感受性について

第三節   和歌と理念価値について

第四節   和歌と言霊の創造力について

第五節   和歌とロゴス性について 

            ~「理念」的象徴表現の真義とは何か~

結       和歌のすすめ

                        ~和歌を通して理想郷を実現せよ~ 

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「和歌における言霊(ロゴス)の真義について」(1)

~短歌の新世紀を拓く~

「短歌の新世紀を拓く」という観点から、新ミレニアムにおいて、過去に捨て去るべきもの、そして、これから育てるべきものについて点検し、「新世紀」を拓く新しい論を、「哲学的評論」として成してゆきたいと思う。

本論文においては、「和歌」という言霊が積極的に用いられているが、この言葉は、もとより「短歌」という言葉と矛盾するものではない。

「短歌」とは、本来、「和歌」の一部門であり、古来より文化的伝統があるものであって、基本的に、「短歌」を根本から論ずるということは、「和歌」を根本から論ずるということであるので、本論文においては、「和歌」という言葉で統一している。

第一節の「和歌と心境について」においては、和歌(短歌)にとって最も着眼するべき点は、言葉の奥にある作者の「心境」そのものであり、必ずしも、表面的な「修辞学」ではないということを論じている。

真に真心に訴えるものこそが、永遠普遍の和歌(短歌)の生命であり、それは、よく生きる魂の糧であり、生命を照らす光明であるということが、訴えたいことの本旨である。

第二節の「和歌と感受性について」においては、優れた感性や、優れた感受性や、優れた洞察力を培ってゆくことが、心身共なる「美しさ」を磨き、「美しい国」を創ってゆくために肝要であることを、「新世紀」の情操教育のあるべき姿から論じている。

第三節の「和歌と理念価値について」においては、和歌(短歌)の果たすべき国際的文化史の中における世界遺産貢献の道について論じている。

これは、「文化大国日本」の運命開拓の鍵となってゆく哲理であり、和歌の中に、積極的に「理念価値」を礼拝してゆくことが、心身共なる繁栄の大道となってゆく可能性について論じている。

第四節の「和歌と言霊の創造力について」においては、「言霊の幸ふ国」という「言霊」の真義について探究し、「光明祈念歌」としての「和歌」(短歌)という分野に、新しい「道」を拓いてゆくことの大切さを論じている。

第五節の「和歌とロゴス性について ~『理念』的象徴表現の真義とは何か~」においては、和歌には、本来、根本哲理(ロゴス)があるべきであるということを論じている。これは、人間という実存に、本来、永遠普遍の根本哲理(ロゴス)があるべきであるということと同趣旨である。

その意味において、基本的に、二十世紀は哲学的真理が軽視された時代であり、二十一世紀の運命開拓の鍵は、哲学的真理を復興(ルネサンス)してゆくことにあるのであるという根本信条を述べたものである。

さらには、「和歌」(短歌)が、桑原武夫氏の述べられたような「第二芸術」ではなく、絶対精神(理念)の顕現としての「根本芸術」の大黒柱と成ってゆくことを、世界的普遍哲学の観点から論じたものである。

以上を、本論文の全体構造の骨子として呈示した上で、和歌における「言霊」(ロゴス)の真義について、順次述べてゆきたい。

第一節  「和歌と心境について」

「和歌」というものは、日本語特有の形式によって生まれる芸術である。日本においては、古来より、千年以上の歴史の中で鍛えあげられてきた一つの「道」であると言えよう。

一般的に「道」というものは、まず、形から入って、形を覚えなければならないものである。その中に、私は、「和歌」という形式に対する芸術としての安定感を感じるのであるが、一定の習熟を得た後には、今度は、「自分らしさ」を表現することが大切になってくる。

これは、「道」と名の付く芸術一般について言えることであろう。形がしっかりしているが故に、自分自身を真に活かすことが出来るのである。秩序があるが故に、より一層、個性を生かすことが出来るのである。

さすれば、真に自由自在となった個性は、何に向かうべきなのであろうか。それは、自己独自の芸術的感動というものであろう。しかし、何に対していかに感動し、それをいかに伝えるかということに関しては、無数無限なる道程がある。

私は、ここで特に大切な観点は、自分の芸術的感動がいかなる「境地」にあるかを知ることであると思う。すなわち、「歌境」の自覚である。

結局の所、和歌を通して得るものは「歌境」であり、和歌を通して追究するものも「歌境」であり、和歌を通して磨いてゆくものも、己が精神(心情)の「歌境」なのである。

宗教が求めるものが「宗教的境地」であるとすれば、哲学が求めるものも「哲学的境地」であろうと思う。同じく絶対精神の文化遺産とされる芸術が求めるものも「芸術的境地」であり、その一部門である「和歌」も、かかる「芸術的境地」を、ひたすらに追究してゆかなければならないのである。

「境地」というからには、確かに何段階かの上下の段階があり、横の個性的広がりもあるはずである。こうした境地は、微妙に、確実に歌の表現の中に出てくる。

言葉には言霊があると古来より言われてきているが、まさしく、歌境によって、言霊の響きが全く異なってくるのである。

一見、表面的には同じような和歌に見えても、よくよくその歌境の奏でる音楽を聴いてみると、聖俗には無限の開きがあるものなのである。

和歌の究極には、「歌聖」への道があるのである。

第二節  「和歌と感受性について」

知識中心の教育の中で、忘れがちなものが「感性」の教育である。フランス文化やイタリア文化に学び、さらに、新生日本ルネサンスの潮流を創ってゆくにあたって心がけなればならないものは、洗練された感性をいかに磨いてゆくかということである。

優れた感性というものは、優れた感受性から生まれる。優れた感受性とは、大和民族が古来より培ってきた文化の特質でもある。

かの俊成の和歌にしても、定家の和歌にしても、洗練された究極の感性がなければ、決して開拓出来ない世界であったであろう。

感性の世界も、幅が広く、奥が深く、高みは富士の如く高峰である。そこには、知性の世界や、力技の世界とはまた違った厳しさが実在する。

そして、本来、知性の巨人や武道家の巨人に近づきがたい畏怖の念いを憶えるのと同様に、感性の巨人には、一種の畏れを感じられなければ、むしろ、己が感性の領域が磨かれていない証明になってしまうのである。

幽玄の極みを尽くした和歌は、その一首にて一つの世界を創造し、一つの「結界」を創造し、そこに一つの「涅槃」を創造し、そこに一つの「神の国」を創造してゆく。

一言一言の「言霊」の中に、音楽も、絵画も、彫刻も、建築も、小説も、戯曲も、人生も、世界も、歴史も、未来のビジョンも、すべてのものが込められている。

そして、その一首が、あたかもインターネットのアドレスのように、異次元世界の時空へと、我々の魂を誘うのである。

かの千利休の厳しさは一体何であろうか。かの世阿弥の厳しさは一体何であろうか。かの池坊の厳しさは一体何であろうか。かの伊勢神宮の「美」における厳しさは一体何であろうか。ここに、「美の結界」が生まれているからである。

故に、畏れの心をもって、「美」に対して慎まなければならない。畏敬の念の向こうに、果てしない「神の国」が実在するのである。

第三節  「和歌と理念価値について」

「和歌」というものは、日本文学、世界文学、宇宙文学を考えてゆく上で、最も貴重な全人類の遺産の一つであると言えるのである。

まず、「神代」から「現代」にまで継承され、さらに「新時代」にまで継承されている全員参加型の歴史文学が、他に実在しているであろうか。

「和歌」を通して観じてみれば、「天照大御神」がどのような品格を持たれた方であり、「須佐之男命」がどのような心情を持たれた方であり、「神武天皇」や「日本武尊(倭建命)」や「弟梯比売命」がどのような心情を持たれた方であるかということは、如実知見されるではないか。

もし、これらの「和歌」がなければ、『古事記』等の文化的価値も、全く違ったものとなったことであろう。

逆に、「和歌」があることによって、国際的日本史の文化的価値が非常に高くなっていると言えるのである。

これは、在原業平を主人公としたといわれる『伊勢物語』にしても、藤原道長を主人公としたとされる『源氏物語』にしても、また、『平家物語』にしても、『西行物語』にしても、近代の「明治維新物語」にしても言えることである。

このような歴史上の人物達の心情を託された「和歌」が、その時代その時代に遺っていることによって、歴史の芸術的価値が飛躍的に向上し、「芸術繁栄大革命」として、真に「国益」と「地球益」と「宇宙益」を増進していると言えるのである。

このような文化背景をよくよく考慮した上で、これより後、新時代の新生日本ルネサンス、新生地球ルネサンス、新生宇宙ルネサンスの一環として、真なる「和歌繁栄大革命」を、国民一同、世界市民一同、真に成し遂げてゆこうではないか。(続)

(天川貴之:JDR総合研究所代表・哲学者)

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