ベッリーニ『ノルマ』より「清き女神~恋人よ 我がもとに戻れ」(scena 全曲)
V. Bellini 『Norma』より「Casta Diva~Ah! bello a me ritorna」
「Casta Diva」(清き女神)
第1幕第1場でノルマが歌うアリア。
前半は、月の女神への祈り。
神殿の祭壇で、民衆を静め平和を、と歌い、
後半は、愛しい人よ私の胸に戻って、と心情を歌う
2つの構成で、ともに美しい旋律が魅力です。
(使用楽譜 Ricordi版日本語訳:杉本知瑛子)
*弾き語り演奏(ソプラノ独唱&ピアノ伴奏:杉本知瑛子)
練習演奏録音公開予定:
歌詞1:
Casta Diva, che inargenti
Queste sacre antiche piante,
Al noi volgi il bel sembiante,
Senza nube e senza vel!
対訳1:
清らかな女神よ、銀色に輝かせている
これらの聖なる古代の木々を
御身の美しい顔を私たちに向けさせたまえ
くもりも、陰りもなく
歌詞2:
Tempra, o Diva,
Tempra tu de’ cori ardenti,
Tempra ancora lo zelo audace.
Spargi in terra quella pace
Che regnar tu fai nel ciel.
対訳2:
強くしたまえ、女神よ
燃える心を強くしたまえ
大胆な熱気を和らげたまえ
平和を地上に広めたまえ
御身が天上を治めておられるように
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*ノルマのアリア : 清らかな女神(月)よ、神聖な古代の植物を銀色に照らせよ。雲も陰りもなく、あなたの美しい顔(月)を、私たちに見せておくれ。
女神よ、人々の怒れる心を抑えたまえ。この土地に平和を。
「清らかな女神」Casta Diva終了
上記のアリアと次のカヴァレッタの間の部分では、ノルマが自らの内なる葛藤と、彼女が抱える状況の重大さについて歌います。彼女はドルイド教徒の巫女長でありながら、敵対するローマ人との間に秘密の恋愛関係を持ち、二人の子供をもうけています。この秘密が明らかになれば、彼女は自らの人々から裏切り者と見なされ、最悪の場合は死に至る可能性もあります。この部分は、ノルマが女神に平和をもたらすよう祈り、同時に彼女の愛する人への情熱的な呼びかけを行う場面です。
*ノルマのレチターティヴォ:
儀式は終わりです。
神が怒る時はローマ人の血を要求し、神殿から私の声が雷鳴のように響くであろう。
*ドルイド教徒の長(オロヴェーゾ)と人々の合唱:
(誰も神の怒りから逃れられない。最初に倒されるのは、ローマの将軍だ。)
*ノルマのレチターティヴォ:
打ち倒せ!私は彼を罰するのだ!
・・・だが、彼をどうやって罰すればいいのか・・・わからない・・・
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「Casta Diva」の続きの歌詞とその対訳(ノルマのカヴァレッタ)
Ah! bello a me ritorna「愛しい人よ 私のもとに戻れ」
歌詞3:
Ah! bello a me ritorna
Del fido amor primiero,
E contro il mondo intiero
Difesa a te sarò.
対訳3:
ああ、私のもとに戻れ、愛しい人よ
初めの頃の誠実な愛よ
そして、全世界に対して
私はあなたをまもります
歌詞4:
Ah! bello a me ritorna
Del raggio tuo sereno
E vita nel tuo seno
E patria e cielo avrò.
対訳4:
ああ、私のもとに戻れ、愛しい人よ
あなたの穏やかな眼差しよ
そして、あなたの胸の中に、私の命を
祖国を、天国を私は持つでしょう
歌詞5:
Ah! riedi ancora qual eri allora,
Quando il cor ti diedi allora,
Qual eri allor, ah, riedi a me!
対訳5:
ああ、あなたはまだ持っているでしょう
私があなたに捧げた心を
あの時のように、ああ、私のもとに戻れ
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この歌詞は、ベッリーニ作曲のオペラ『ノルマ』の第1幕でノルマによって歌われます。
彼は33年間という短い生涯の中で、『カプレーティとモンテッキ』『夢遊病の女』『ノルマ』『清教徒』などの傑作を作曲しています。
ノルマは純潔の掟を破り、敵側の男性と恋に落ち、隠れて二人の子供を育ており、さらにその男が心変わりをしたという、最悪な状態に陥っています。
この歌詞は、そのようなノルマの心情を表現しています。
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オペラ『ノルマ』は、1831年に初演されたイタリアのオペラ作品で、ローマ帝国支配下のガリア地方(現在のフランス)を舞台に、ローマ総督ポリオーネとドルイド教の巫女の長ノルマ、若き巫女アダルジーザの愛と苦悩を描いた物語です。
このオペラの中に、有名なアリア「Casta Diva」(「清らかな女神よ」)があります。この美しいアリアは、主人公ノルマが月の女神に祈りを捧げる場面で歌われます。ジョーン・サザーランドやマリア・カラスなど、多くの有名なソプラノ歌手がこのアリアを歌いました。
このアリアは、ノルマが愛と宗教の対立に直面している複雑な感情を表現しています。
彼女は巫女でありながら、一途に愛を求めています。最終的には死を選び、愛を全うします。
ベッリーニによるオペラ「ノルマ」は、19世紀前半にオペラの主流となった「ベル・カント・オペラ」を代表する作品です。
ドルイド教徒の巫女長「ノルマ」、ドルイド教徒のいるガリア地方(今のフランス)を占領するローマの将軍「ポリオーネ」、若い巫女「アダルジーザ」の三角関係がもたらした、悲劇のオペラです。
ノルマの見どころは、「清らかな女神」Casta Diva、女の友情の二重唱「ご覧なさい、ノルマ・二重唱」Mira, o Normaがあります。
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(あらすじ)
Casta Diva(清らかな女神・月)に仕える巫女たちは、貞節の掟を守らなければならない。
ノルマは純潔の掟を破り、敵側の男性と恋に落ち、隠れて二人の子供を育ており、さらにその男が心変わりをしたという、最悪な状態に陥っている。
ドルイド教の祭司長であるノルマは、敵であるローマの将軍ポリオーネと関係を持ち、二人の子供を密かに育てていた。しかし、ポリオーネは心変わりして、アダルジーザという若い巫女と恋仲になる。
ノルマとアダルジーザはポリオーネの裏切りを知る。アダルジーザは手を引こうとするが、ポリオーネはアダルジーザをあきらめず、神殿に侵入してくる。ノルマはアダルジーザを諦めて立ち去るように言うが、彼はそうしない。ノルマはドルイド教団に自分の罪を告白する。ノルマとポリオーネは罰として火で焼かれる。
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- 第1幕:
- ガリア人たちの不満が高まり、ローマ軍への闘いの気運が高まっています。
- ローマ総督ポリオーネは、ノルマ(ガリア地方の巫女長)との間に子供をもうけていますが、彼はアダルジーザ(ガリア地方の巫女)に恋をしてしまいます。
- 第2幕:
- アダルジーザもポリオーネに恋をしていましたが、「ノルマとの友情」を選択し、ポリオーネに別れを告げます。
- 諦めきれないポリオーネはアダルジーザを迎えに行き、一緒にローマに連れて帰ろうとしますが、ガリア人に捕らえられてしまいます。
- ノルマは「アダルジーザを諦めるのであれば助ける」と語りますが、ポリオーネはそれを拒否します。
- ノルマは「自分自身とポリオーネ」に処刑を宣告します。
- 第1幕:
- 二人が処刑台へ上るところでオペラが終わります。
■オペラ全体のあらすじを知りたい方のために(参考)
- 舞台は、紀元前50年頃、
- 古代ローマ帝国の支配下にあるガリアの地。
- 神殿の巫女であるノルマは、処女性を極めるはずの身分にありながら、ローマの総督ポリオーネとの間に2人の隠し子がいました。
- しかし、ポリオーネはノルマに飽き、若い巫女アダルジーザの元へ。
- 怒りに震えたノルマは、ローマとの闘いの合図の鐘をならし、ポリオーネは捕らえられます。
- 彼を裁くことになったノルマ。
- 「アダルジーザを諦めるなら助ける」と言いますが、彼は拒みました。
- ノルマは集まった民衆に告げます。
- 「この男と共に、ひとりの裏切り者が神聖な誓いを破った。同様に死を!」
- それは誰かといきり立つ民衆を前にノルマは答えました。
- 「それは…私です。」
- ノルマは、ポリオーネと自分自身に処刑を宣告、2人揃って火刑台に上がっていくところでオペラの幕が降ります。
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(参考資料)
ベッリーニの肖像と5000リラ紙幣
ヴィンチェンツォ・サルヴァトーレ・カルメーロ・フランチェスコ・ベッリーニ(Vincenzo Salvatore Carmelo Francesco Bellini)
1801年11月3日 – 1835年9月23日)はシチリア島・カターニアに生れ、パリ近郊で没した作曲家。主としてオペラの作曲家として有名である。名字はベルリーニ、ベリーニとも表記される。1985年から1996年まで発行された5000イタリア・リレ(リラの複数形)紙幣に肖像が採用されていた。
ロッシーニやドニゼッティとともに「ベル・カント・オペラ」と称される19世紀前半のイタリアオペラを代表する作曲家である。中でも特にベッリーニについてはショパン、ベルリオーズ、ワーグナーらの賞賛と愛情の言葉を得ている事で知られている。 (Wikipedia)より