塩野17 )理想の介護施設・・・23号(会員便り)

理想の介護施設

                           塩野 秀作(76年 商学部

                                                                                  (大阪慶應倶楽部:副会長)

この6年間で相次いで両親を亡くした。父は6年前に96歳で、母は3年前に93歳で亡くなった。両親とも長命であった。母は父の年齢より長く生きると思っていたが、父の死後、張りを失くしたのかテレビにも興味がなくなって一切見なくなった。週刊誌は見たいらしいので、週刊誌2冊は毎度持参した。母は還暦を過ぎて脚膝の調子が悪いようであったが、介護施設に入った当時に歩行困難で車椅子でしか動けない状態であったので、それから急速に衰えて認知症となり人は判別できたが、話していても数分前の記憶がなくなり会話が長く続かなくなった。何度かイライラして「もうそのことについてはさっき言ったでしょ。」と何度となく言ってしまったことを今では反省している。二人は入所していた老人介護施設と併設された病院の病室で最期を終えた。

小生は5人兄妹の4番目である。跡取りの長兄・義姉が父母を介護施設に入れ世話をしていた。介護施設では個室に入っており、比較的時間が取れた小生は、ほぼ月に2回、2週間毎の土または日曜日に見舞いに通っていた。介護施設の個室は殺風景なので、生花を持参していけると喜んでくれた。 香りのするものを持っていくと興味をひいたようであった。

高校の後輩で医師免許を持ち、入所者にとって理想の介護施設のあり方を追求している方がいる。

『介護をしない介護施設が理想である。少しでも自分でできる人には自分で何事もやってもらう。』そして頭を使うことが大切ということで国語や算数、社会などの科目を勉強する「おとなの学校」が注目されている。

友人たちのほぼ半分がリタイアし仕事をしていないという年齢になった。後期高齢者になるにはまだ時間がある。今後のことを考えるとできるだけ仕事と趣味の世界を楽しんで、本当に一人で動けなくなるような状態になれば、介護をしない介護施設で「おとなの学校」の授業を受けて、刺激のある生活をしながら死ぬまで暮らしたいものである。

* 塩野 秀作:経営者・塩野香料(株)社長

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