ソフィアさんちのチルちゃんと僕(15)~間逆の真実⑧~
「おじさんの育てた蝶、もっともっと飛んでこないかなあ」
「僕、もう追いかけたり捕まえたりしないよ。」
「クーちゃん、本当にいい子になったわね。」
「エッヘン!僕、いい子だもん。」
《バッハがヴェルクマイスターの音律で、いわゆる『平均律ピアノ曲集』を作曲した結果、ピタゴラスの三和音は、5度が純正であれば3度が不純でも、かえって緊張感の強い美しい響きを与えることがわかったのである。
音律の問題は、ピアノを伴奏楽器として使う声楽家やピアニストにとっては、天地がひっくりかえるほどの大問題なのである。バッハやベートーヴェン、シューベルトなどの曲を考える場合、もちろん演奏や鑑賞をする場合も、単なる前提条件ではあるが、平均律(12等分平均律)理論を絶対的な定説として信じて疑うことなく研究を続けていた、私の昔の長大な時間が惜しくてたまらない。》
「ソフィアさん、かわいそう・・・」「ソフィアさんだけじゃないわよ。歌やピアノで演奏するときは、もちろん日本ではだけれど、だれも本当の音楽を聞くことが出来なかったの。・・・」