野村 政直(19)~「福澤諭吉全集の牛歩研究第19」~・・・43号

「福澤諭吉全集の牛歩研究からの19話と、いまだマスクなど」

                     野村 政直 (平成15、経) 令和4年820

コロナによるパンデミックの第6波が2022年6月頃にはかなり沈静化し、三田会の総会なども6月開催に関しては集まる事もこれまで程には憚られなかった。しかし7月中旬となり、今度はBA.5と呼ばれる変異種が主流な第7波が急速に拡大し、コロナパンデミック3年目の夏も重い影を落としている。欧米では見かけなくなったマスクも日本では3回目の夏でも必需品として外出時や通常の勤務時に必要となっている。それでも今年は3年ぶりに祇園祭も行われ、大勢の見物客が京都の夏の風物詩である宵山や山鉾巡行を見ることが出来た。平安の昔から疫病退散を祈願して行われてきた祇園祭なので、今のコロナパンデミックの事態では、一番皆の気持ちが籠る夏祭りの復活と言える。この祇園祭の前週に参議院議員選挙があり、自民党を中心とする与党側の圧勝結果で終わった。投票結果から読み解かれる民意は、今の政府の政治・行政活動は概ね国民に支持されており、3回のワクチン接種を行き渡らせて重症化を事前回避している政策や、G7の一員としてロシアのウクライナ侵略が決して許されない国際法違反なので、ロシアに対して強い経済制裁を科している政策も国民は指示表明している。そして与党や改憲支持政党の国会での勢力範囲が改憲に必要な2/3を超えたので、急速に憲法改正の発議に関する話題が高まっている。これは日本の隣国でもあるロシアの蛮行が日本にまで及ぶリスクに対して、今の戦後制定された日本国憲法では国を守り切れない恐れがあり、戦争に巻き込まれてしまわない様に憲法の条文をどう改定するべきかの議論が今後活発になりそうだ。ロシアや北朝鮮と言った国際ルールを守らない、核攻撃を主張するとんでもない野蛮な国家と日本は地勢学的に隣接する危ない位置にあり、尖閣領有権で譲らない中国とも広範囲で国境を接している。最近では東シナ海でのちょうど国境線辺りでの海底油田採掘を勝手に進めており、中国共産党政府もロシアや北朝鮮と同じ穴の貉と言える。全ての国際紛争は国連憲章に則り、国連安全保障理事会によって不法な問題が発生しないとの前提で作られている日本の平和憲法なので、この理事会の一角を占めるロシアが国連憲章を無視した、違法な侵略を続けて、ウクライナ国民の主権と財産を侵害している実態は看過できない。日本は蛮行を重ねるならず者国家群に対して、決して攻められない様に平和憲法の理念は堅持しつつ、時代の変化に即応した改憲が必要な時代となってきている。ドイツでは頻繁に憲法改正が行われている。自衛隊に関する原理原則は堅持しつつ、時代や周りの変化に即応した国の原則の柔軟な対応をしておかないと、ウクライナ以上に悲惨な将来が子供らやその次の世代の日本の社会で起こってはいけないので、今の内からしっかりとした憲法改正の論議と、必要な対応を図るべき時期に来ていると考える。

歴代の首相の中で最長の在任期間を務めた安部元首相が奈良での参院選の応援演説中に凶弾に倒れた悲しい事件もこの7月に起きた。原因を探るととんだ勘違いと言うか、濡れ衣の様な怨恨を安部元首相に抱いた41歳男性の凶行で、奈良での警備体制の不備も指摘されている。今後の憲法改正に活躍されそうな国際政治経験を積んだ67歳の元首相の若すぎる死は、秋に国葬と言う形で日本国民の悲しい事件となった。

さて少しずつ読み進めている福澤諭吉全集の第4巻、文明論之概略、巻之四の続きから触れてみたい。頁140の8行目辺りから以下の記述があった。「昔日は世間を制するに唯武力のみありしもの、今日に至ては之に代るに知力を以てし、腕力に代わるに狡猾を以てし、暴威に代わるに欺計を以てし、或は諭し或は誘ひ、巧に策略を運らしたる趣を見れば、仮令ひ此人物の心事は卑劣なるも、其期する所は稍や遠大にして、武を軽んじ文を重んずるの風ありと云わざるを得ず。」これは当時のヨーロッパの風潮を記したものだが、残念ながらロシアによるウクライナへの軍事侵略は真逆的な暴威が実行されてしまっている。グローバルな繋がりが進んで文を重んずる世界が、1つの蛮行により急激に各国ともに自国を守る武の必要性を再考せざるを得ない世界情勢となっている。

先生はこの記述に続いてヨーロッパのカトリックからプロテスタントへの宗教改革に関して、以下の様に書かれている。「耶蘇の宗教を是非するには非ずして、羅馬の政権を争ふの趣意なり。故に此争論は人民自由の気風を外に表したるものにて、文明進歩の徴候と云ふ可し(宗教の改革文明の徴候)。宗教論争でも確かに一部では武力を使った殺人行為も歴史的に繰り返されてきているが、イデオロギーの違いからの殺戮も互いに理解しようとしない側面が強く、自由民主主義陣営と独裁国家陣営の主張はかみ合わず、未だにウクライナ情勢は出口の見えない領土進行が続いている。

巻之五に入り、学問の官製について興味惹かれる記述があった。頁160、行3において「我国の学問は所謂治者の世界の学問にして、恰も政府の一部分たるに過ぎず。試みに見よ、徳川の治世250年の間、国内に学校と称するものは、本政府の設立に非ざれば諸藩のものなり。或は有名の学者なきに非ず、或は大部の著述なきに非ざれども、其学者は必ず人の家来なり、其著書は必ず官の発兌なり。~~、都て学問の事に就ては一つも私の企あることなし。」この様な社会情勢や日本の教育実態を憂い、自ら塾を創設して若者に社会に役立つ教育を施そうと立ち上げられたのが慶應義塾大学の根本であることを知ることができ、感銘を受けた。高等学校教育までに国が定めた教科書を使って、基礎教育を施す必要があるとしても、社会人に繋がる専門教育を施す大学では、特に国立や公立ではない立場の私立大学であれば、教育者は政府の一部分では当然なく、用いる教科書や教育の仕方に関して、各大学の特徴や方針がユニークに存在して良いのであろう。少子高齢社会が進み、大学に入る世代の子供の絶対数が減ってきているが、それでも今の時代は望めば、皆大学教育が受けられる有難い時代となっている。唯、それぞれの大学の特徴、教育方針、学生に求めるものが明確に大学受験者に伝わっていないのではないだろうか。単に有名大学とか、就職に有利であるとかの視点から大学を選択し、受験偏差値で仕訳けられている感がある。本来ならばその大学を希望する学生は皆受け入れ、大学卒業に見合う学力や専門性が身につかないものには学位を与えない様な欧米的な大学制度が良いのではないだろうか。この点通信教育は、良い制度と言えよう。

今は何といってもCOVID-19によるコロナパンデミックの終息が一番の感心毎で、季節性のインフルエンザ同様な扱いにできるにはどうしたら良いのかが医学会、医療関係者のみならず、世間全体の感心事となっている。この作業においてはCOVID-19感染による重症化要因を特定し、肺炎や血管炎の病理を解明し、その治療法や予防法を早期に得ていく必要がある。今回慶應大学は京都大学や大阪大学などの他大学と協力してコロナ制圧タスクフォースを組み、COVID-19の重症化遺伝子としてDOCK2遺伝子を同定することができた。重症化する人にはこの遺伝子の機能が低下しているとの事。この機能解析により有望な治療標的となる可能性を見出したと医学部よりプレスリリースされた。病理に基づいた治療法が出来れば、季節性のインフルエンザ並みに取り扱うことは問題なくなり、マスクのない、2019年暮れからの武漢からの異常なパンデミックは漸く皆の英知で終息に向かうのであろう。そう期待できそうな医学部からの発表があったので少し触れてみた。

最後に職場ではカーボンニュートラルからの化石燃料削減と再生可能エネルギー利用推進を図っているが、素材化学メーカーでは原料から製品を造り出す過程において多くのエネルギー必要行程があり、コストに見合う生産方式とエネルギー利用を維持・発展させながら、再生可能エネルギー転換を図ることは相当な技術的困難の山積状態と云わざるを得ない。難解過ぎて、多くのメーカーが難渋している実態がある。こちらはまだまだ続く日本のモノづくりの難題と言える。

(野村政直:石原産業㈱勤務・医学博士)

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