野村16 )福澤諭吉全集の牛歩研究16 )・・・40号

「福澤諭吉全集の牛歩研究からの16話とwithコロナなど」

             令和3年1120日 野村 政直 (平成15、経)

令和3年11月となりコロナ第5波は日本では収まり、緊急事態宣言や蔓延防止措置と言った人々の行動を制限する規制は外された。寒くなると第6波が来るだろうと予想されているが、この波のサイズが小さく済むようにこれ迄の感染防止諸活動の継続が求められている。その為に職場でのマスク着用の継続は続き、まだまだ息苦しい日常生活が続いている。それでもコロナ感染を広げない、自分や周りの人たちの健康を維持する為の協力作業は日本中で続いている。当初は日本のコロナワクチン接種は開始が遅れ、東京オリンピックも無観客開催となってしまったが、この10月末では国民の70%以上でワクチン接種が完了し、先進国でトップの接種率となっている。毎日の新規患者数も先進国の中で抜群に低下し、世界中から注目を集めている。ルールを決めたら皆が一斉に確実に行動する日本社会の素晴らしさ、凄さがあるのだろう。ワクチン接種が先行したイギリスやアメリカでは、ワクチン接種を受けない自由も尊重されているので、60%を超えてからそれ以上伸びるのが難しく、依然として連日相当数の感染者が報告され、死亡も続いている。それでも幸いここにきて2つの経口治療薬も承認され、死亡率は改善されてきている。これまでのインフルエンザ感染症同様に、新型コロナに感染してもワクチン接種のお陰でそれで重症化しない様に出来て来たし、仮にひどく感染しても、それで死なない治療が確実に出来る様になれば、今回のパンデミックが収束するのはそれ程、遠くはないだろう。日本が先進国の中でその先頭を示せると素晴らしい。漸く三田会の活動もそろそろとゆっくり開始できそうな日本での状況と言える。しかし、まだまだ3密回避は必用とされるだろう。三田会の年齢構成を考えると活動はもう1年先ぐらいであろうか。

間違いなくwithコロナで社会は大きく変わってきた。まず、人と直接会うことは極力少なくなり、企業活動での出張も大幅に減っている。東京や大阪での多くの会合や会議も今はインターネットを活用したWEB会議が主流となり、肉体的、経済的に大いに助かっている。その反面JR東海の赤字は続いている。社会が変わったので致し方ないことで、鉄道会社や観光産業は当面大幅な改善はなく、それでも企業活動を継続できるように知恵を更に絞る必要がある。幸い化学メーカー勤務なので、素材産業はコロナからの影響は少なく済んでいるが、原材料の高騰や原油高があり、企業の継続性も簡単ではない。一人ひとりが賢く生き延びる算段と、智慧、情報分析が重要であろう。

福澤全集の研究も本当に牛歩的な進捗でスピードは上がらないが、それでも着実に前に進めていけば、そのうちに全集読破も見えてくるであろう。やはり個人の思想や業績を理解するのに、書かれたものを全てまずは読んでみる事が、磯田道史さんも仰っているように本筋の様に思え、福澤先生の膨大な著述に順に触れて来ると、幕末から明治に活躍された当時の社会事情との歴史的な変遷も少しずつ見えて来て、何とか全巻の最後まで読み通したいものだ。今回も第4巻の文明論の概略を少しずつ読み進めている中から線を引いた個所の考察を続けた。この記述には興味惹かれる内容が多数出てくるので、慌てることなく、じっくりと読み進めている。そんな中で、特に興味を覚えて下線を引き、自分の見解をそれに書き添えた個所を下記に纏めてみる。

文明論之概略、巻之二の頁57行12からの記述で「事物の働きには必ず其原因なかる可らず。而してこの原因を近因と遠因との二様に区別し、近因は見易くして遠因は弁じ難し。近因の数は多くして遠因の数は少なし。近因は動もすれば混雑して人の耳目を惑わすことあれども、遠因は一度び之を探得れば確実にして動くことなし。故に原因を探るの要は近因より次第に遡て遠因に及ぼすに在り。其遡ること愈遠ければ原因の数は愈減少し、一因を以て数様の働を説く可し。」この記述に関連する説明として、この様な記述も有った。「落馬して腰を打ち、遂に半身不随となった時、単に打撲治療だけでは駄目で、慢性的な背後にある多年飲酒の不養生に遠因があるので、その治療を先にしないと、又同じような事故を起こすことになる。世の中の多くの禍において、同様な対処方針が肝心といえる。」全く異論のない考察であり、多くの問題もその遠因を深く考えていく事で、根本的な解決や対応に繋がることに成り得るので、近因で流されて一時凌ぎで済ませてしまうと、同じようなトラブルが再発してしまう。これに関連する先生の著述の中で、第4巻の頁76行3では、「事の成敗は人の数に由らずして智力の量に由るとのことは前段の確証を以て明に知る可し。故に人間交際の事物は愈皆この智力の在る所を目的として処置せざる可らず。十愚者の意に敵せんとして一智者の譏を招く可らず、百愚人の誉言を買はんがために十智者をして不平を抱かしむ可らず。愚者に譏らるるも恥るに足らず、愚者に誉めらるるも悦ぶに足らず、愚者の譏誉は以て事を処するの縄墨と為す可らず。」と述べられた。世論は時に愚かな言動に流され、マスコミの報道も時に愚かな偏重を持つ所がある。勿論独りよがりは駄目であろうが、多くの愚かな言動に多くの人々が流されてしまっても、一智者の智力に富んだ行動を人間交際から活かすことも大切と言える。ちょうど今日は衆議院選挙の投票日であり、マスコミ報道に流されることなく、自分の判断で次の国政を任せるに足る人物を選択することは、民主主義の基本であり、この原稿が出来次第、家内と共に選挙に出かける予定にしている。

この巻之二の最後の方となる頁80行14では「今我日本は外国人と利を争ふて理を闘するの時なり。内に居て淡泊なる者は外に対しても亦淡泊ならざるを得ず、内に愚鈍なる者は外に活発なるを得ず。士民の愚鈍淡泊は政府の専制には便利なれども、此士民を頼て外国の交際は甚だ覚束なし。(中略)其勇力なきは天然の欠点に非ず、習慣に由て失ふたるものなれば、之を回復するの法も亦習慣に由らざれば叶ふ可らず。習慣を変ずること大切なりと云う可し。」毎日の生活習慣が愚者にも変わるし、智者にも変わり得る。良い書物を良く考えて読み、体に良いものを食し、心がけの良い人と交際し、良い仕事を人の為に社会の為に出来きれば、愚者に変わってしまわず、智者として役立っていけるのであろう。それには良い習慣が重要と先生は述べている。

塾からの報道関係者向けのプレスリリースの中から、今回は疲弊したT細胞を若返らせ、強い抗腫瘍効果をもつT細胞の作製に成功と題された医学部生物学・免疫学教室からの仕事を少し紹介してみる。感染症でも自己免疫疾患でも、癌でも、遠因ではないが、基本的な生命力はその人が持っている免疫細胞の活動力や能力によって病気が勝つか、その人の健康体が勝つかの勝負を日々繰り返していると言われている。その免疫力の中でも特にT細胞と呼ばれるリンパ球が肝心な働きをしており、今回の研究成果発表はその免疫力を回復させ、より強力な武器として生体内で活躍してもらう助太刀としての一治療法が発表され話題を集めた。数年前にがん免疫療法でノーベル医学生理学賞を受賞された京都大学医学部の本庶祐教授の業績であるオプジーボを使ったPD-1抗体療法においても癌細胞を攻撃する最大の力はT細胞の活動力で、これを疲弊した状況から、反転して活動的に出来る治療法として、今後日本だけではなく、世界的に利用されていく1つの癌治療法を慶応大学から発信された研究成果は注目に値する話題と言えるので、ここに取り上げてみた。

さて注目衆議院選挙も10月31日の投開票結果により保守系政党の維持となり、コロナ政策が今後も第一課題として取り組まれ、元の生活の戻れるように政治も企業も活動を継続していく為に、より智力を発揮していく必要がある。COVIT-19と呼ばれた今回の新型コロナウィルスは私たちの生活スタイルを大きく変え、元気に過ごすことは簡単ではない事が再認識させられるパンデミックとなっている。(野村政直:慶友三田会会長・石原産業社長室勤務・医学博士)

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