野村15 )福澤諭吉全集の牛歩研究その15・・・39号

「福澤諭吉全集の牛歩研究からの15話とワクチン問題など」

                                     野村 政直 (平成15、経)

7月下旬から開催された東京オリンピック2020は昨年からのコロナ感染が収束することなく、残念ながら無観客開催となった。事前のチケット抽選でバスケットボールとサッカーの観戦チケットを得ていたので、無観客開催となり、大変残念なものとなった。それでも柔道やソフトボールや野球など日本の選手たちの活躍に連日テレビの前で応援した。各競技、それぞれに息を飲む熱戦が繰り広げられ、これまでにない良い結果を選手達は残された。金メダル数は27個にのぼり、メダルに届かなくても陸上では久方ぶりの決勝進出など、手に汗握る素晴らしいスポーツの祭典が幕を閉じた。コロナ感染は増えては緊急事態宣言や蔓延防止措置が人口の多い都会地を中心に発出され、人の流れがある程度抑えられると政府の判断で解除となるも、また暫くすると感染率が上昇し、次の緊急事態宣言発出を繰り返している。世界的なパンデミックでは致し方ない政府の対応なのかもしれないが、これらのコロナ対策は後手後手に終始している現状となっている。このコロナ禍を収束に向かわせるにはワクチンの普及しかないと欧米で急ぎ開発されてきたCOVID-19に対するワクチン接種が日本ではこの4月から急速に進んで来た。欧米医薬メーカー製のワクチンなので、当初計画していたタイミングのオリンピック前までに十分なワクチン普及を済ますことは叶わず、この7月・8月になってワクチン接種率が急速に上がってきた。当初は6割ぐらいに達すれば集団免疫が出来てコロナは収束に向かうと期待されたが、ここに来て感染力の強いデルタ型と呼ばれている変異ウィルスが猛威を振るい、ワクチン先進国でも感染が再び拡大してきて、イスラエルではワクチン接種3回目を開始している。日本では何とか2回の接種を若い人たちにも普及しようと推進を図っているが、首都圏を中心にデルタ型の感染が早く、医療崩壊が始まってきていると報じられ、入院ができずに自宅待機の患者が急速に増えてきている。30代、40代で基礎疾患はないのに、コロナ感染後にはあっという間に重篤症状となる患者も報告され、今回のコロナ感染の収束は依然として見えない。唯、高齢者の致死率は明確に減少し、今は0.2%前後となり、通常のインフルエンザの0.1%に近づいてきているとの期待が持てる報告もある。自分も栗東市の斡旋でファイザー製のコロナワクチンを2回接種することが出来、特に重篤は副反応もなく済ませられたので、まずは一安心。それでも感染者との密な接触などがあると、直ぐに感染する様なので、職場に迷惑を掛けるわけにはいかず、細心の注意を払って感染防止対策に努めている。次の原稿を書く頃には何とか医療崩壊無く、更に落ち着いてほしいものである。

さて遅々としか進まない福澤全集の研究だが、今は何でも継続性が大切なkey wordとなっているので、少しずつの進展でもこの活動を続けている。今はまだ第4巻の文明論の概略を少しずつ読み進めている。この記述には興味惹かれる内容が多いので、慌てることなく、じっくりと読み進めている中で、特に興味を覚えて下線を引き、自分の見解をそれに添えた個所をピックアップしてこの投稿原稿に引用している。

全集の第4巻の53頁では、「人の心の働きは千緒万端、朝は夕に異なり、夜は昼に同じからず。今日の君子は明日の小人と為る可し、今年の敵は明年の朋友と為る可し。……他人の心を忖度す可らざるは固より論を俟たず、夫婦親子の間と雖ども互いに其心機の変を測る可らず。只に夫婦親子のみならず、自己の心を以て自らよく其心の変化を制するに足らず。所謂今吾は古吾に非ずとは即ち是れなり。…」と書かれていた。

今の情報の変化も人の心の動きと同じく、時々刻々の変化がとんでもなく早くなってきている。良き人間関係や家族関係の維持や進展にも人の心の移ろい易さ、情報変化の速さ、環境変化の速さに常に注意を払って、それでも継続性(サステナビリティ)を上手に図っていくのが肝心であろう。この継続性は世界中の企業活動で今鋭意推進が図られている「統合報告書」で言う所のマテリアリティ(重要項目)の選別にも繋がり、事業の継続性と変化の読み取りは大きく関わると言える。

同じく先生のこのタイトルの著述の中で、全集の第4巻の54頁14行辺りで以下の下線を引き、自分の見解を添えた。「前の所論に由てこれを観れば、人の心の変化を察するは人力の及ぶ所に非ず、つまり其働は皆偶然に出て更に規則なきものと云て可ならんや。答云く、決して然らず。文明を論ずる学者には自らこの変化を察する一法あり。…..。蓋しその法とは何ぞや。天下の人心を一体に視なして、久しき時間の間に広く比較して、その事跡に顕はるるものを證するの法、即ち是れなり。」

どこまで広げて検討し、分析した結果に基づくかによって、人の心の変化の推測を可能と出来るかが違って来るのだろう。しかしこの様な心理的な面をこの当時の書物に書き残している福澤先生の素晴らしさに改めて驚いた。確かに自分の周りの人々の心の変化をあるデータなどから読み取れ、推測が可能となれば、対人関係での悩みや、ストレスは格段に違ったものになるだろう。更にこれに関連する先生の記述で続いて次の個所に下線を引いた。

「英国にて毎年婚姻する者の数は穀物の価に従ひ、穀物の価貴ければ婚姻少なく、其価下落すれば婚姻多く、もって其割合を誤ることなしと云へり。日本には未だスタチスチクの表を作る者あらざれば之を知る可らずと雖も、婚姻の数は必ず米麦の価に従うことなる可し。」

出生数や人口の減少に将来の悩みを抱えている日本や他の先進国の為政者にも参考となるユニークな先生の記述と思えた。確かに毎日の生活が得ている給料で楽に送れ、余裕が持てれば婚姻数は増え、出生数も増えるであろう。これとは逆に生活が今の給料ではぎりぎりで、とても余裕がなければ出生数の減少につながるであろう。勿論、そんなに単純に割り切れない人口減少の問題だろうが、当時の世相で米麦の価格変動と婚姻数の増減を、今でいう統計学から話題提供している先生の卓見に強い興味を覚え下線を引いて、自分のノートに整理した。

今の化学会社の新しい話題としてカーボンニュートラル(CN)の話題を最後に少し触れてみたい。この原稿を書いている8月お盆の季節にも西日本を中心にこれまでにない集中豪雨が起こり、各地で河川の氾濫やがけ崩れがニュースとなっている。幸い滋賀県の降水量は九州や西日本のレベルではなかったが、それでも強い雨が長く続いて、不安を覚えた。やはり地球温暖化が加速しており、今以上に二酸化炭素の削減を早急に進めないと、この危ない地球温暖化問題が更に牙を向いて列島を襲いそうな異常気象が起こっている。CN対応では日本の化学会社は多くの面で検討を進めており、炭素を如何に捉えて資源化するか、再利用するかの検討を先進国の中でも数多くの企業で進めている。社長室のメンバーとしてこの立案や対応を進めている今の仕事で、CCUSと呼ばれる炭素の再利用反応や、地下貯蔵プロジェクトは日本では環境省や経済産業省が企業や大学などと組んで進めており、加速されている。また資金供給面もCCUS活動を後押ししており、二酸化炭素削減は待ったなしの状況になってきている。今はまだ、国への報告義務としては企業活動からのエネルギー利用量や、二酸化炭素排出量が必須で、次の転換や貯蔵量の必須化までは進んでいない。今後は政策的に2050年でのCNの達成を日本政府は内外に明確に発信しているので、化学企業活動も国からの大方針に合わせた政策転換が急ぎ求められ、その対応にも今、当たっている。

(野村政直:慶友三田会会長・石原産業社長室・医学博士)

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