野村12)福澤諭吉全集の牛歩研究からの第12話と、今のコロナ禍について・・36号

「福澤諭吉全集の牛歩研究からの12と、今のコロナ禍について

                       野村 政直 (平成15、経)

この11月に入り米国ファイザー社やモデルナ社のコロナワクチンが約9割かそれ以上に有効との報告があり、4年振りの米国の大統領選挙結果と共に世界中の話題の中心となりました。日本でもこの晩秋になってもまだまだコロナ禍は無くなるどころか増加傾向が続き、大都市では第3波の到来と言われ、TVでは感染者の増加傾向が連日真っ先に報道されています。特に高齢者では重篤化する率が高く、不顕性感染者が多い若い人との家族内感染の増加も指摘されています。至る所で集団感染、クラスターの報告があります。産業別では国のGotoトラベルや、Gotoイート政策で急激に落ち込んだ観光産業、鉄道・バス、飲食産業等を何とか支えようと支援が図られていますが、ここに来て再ブレーキが必用な状況です。飛行場や港湾の厳しい出入国制限の緩和はほんの少しずつであり、依然として多くの分野で苦しい経済状況が続き、在宅勤務のテレワークの継続も東京では常態化してきています。落ち込む経済活動の反面で株価は高騰し、通信関連や電子商取引は急速に伸びているので、産業構造の転換が起こっているのは間違いないと思います。

高齢者が多い同窓会活動では、春以来電車移動すらせずに感染対策を講じている方もあり、今年の三田会活動は略全面的に休止となっています。そこで代わりに登場してきているのがZoomや、Teamsや、Webexと言ったITシステムを使ってのWeb会議で、使い方に慣れてくると東京や大阪等の大都会に集まる必要性が減り、国内外出張の機会も大幅に低下した1年でした。オンライン飲み会なるものも出てきて、大学でも遠隔授業が続いていて、今の学生さん達は大変と思います。

日本の新内閣となった菅内閣では情報技術革新の必要性が打ち出され、アメリカや韓国より遅れていると言われるIT技術の推進が明確に大きな目標となり、行政的にもデジタル庁が設けられる運びとなりました。社会変化のスピードが加速し朝令暮改どころか、1時間前の良い知らせ、悪い知らせがIT技術により世界中を瞬時に駆け巡り、政策や経済状況にとても早く影響を及ぼすようになってきて、特にビジネス関係では情報の把握力や、管理がより一層重要になってきています。柔軟な適応力や知識や経験が刹那・刹那ごとに求められますが、拙速と言う間違いも時に発生してしまします。悪意によるフェイクニュースもあります。目立つのはテレワークの普及により昔のように本社に集まって延々と会議、会議で何も決まらない日本的なスタイルが改善され、行政的にも押印の廃止やその大幅削減が求められています。さて、そんな今の時代に生きながら、凡そ150年前に活躍された福澤先生の書かれた全集からの興味惹かれた個所のご紹介を再開したいと思います。温故知新、今の時代や次の時代に福澤全集の解析は間違いなく有意義と考え、継続しています。

まだ少しだけ第3巻の最後辺りが残っていました。仕事上の都合でこの読書にあまり時間が取れず遅々とした全集の読み込みとなっていますが、当初よりは明治初期の古い言い回しに少しずつ読み慣れてきましたので、内容の把握と分析で、僅かずつでも進化出来ていれば幸いと思います。

さて、自分のメモを辿ってみますと、第3巻のページ532で台帳〆切の仕方に関する記述があります。「此の平均の体裁は用を為すこと最も広くして、我輩の称誉する所のものなり。…証拠と成るなり。」この辺りで先生は貸借対照表、複式簿記の考え方を伝え、この重要性を説明され、その普及に役立ったと思われる記述が数多くあります。慶應義塾大学の素晴らしい1面として、公認会計士国家試験の合格率において長く日本一を続けているのは塾員周知の誇れる事と思います。

その実態としては2019年の公認会計士試験の合格者1337名中、慶應義塾大学出身者の合格者数は183名でした(公認会計士三田会調べ)。この大学別合格者数で第1位の成果は1975年から続いていて、その記録を45年連続へと伸ばしています。塾では1980年から公認会計士や税理士の資格取得を目指す学生に向けて、商学部内に会計研究室が設置されています。その研究室では、ガイダンス、講演会、監査法人見学会等、種々の啓蒙的なイベントを企画・実施し、学部・学年を問わず、広く門戸を開いたサポートが行われ、本分野における日本一の合格率維持に大いに貢献されていると紹介されています。この45年間日本一という輝かしい実績は商学や経済学関係の塾員・塾生の研鑽の賜物と思いますが、日本のビジネスにおける会計計算がアジアの中では一足早く欧米先進国基準と合致し、商売における信頼を国内外に広く進めてこられた原動力に福澤先生の翻訳や啓蒙活動があったとも言えるでしょう。台帳の〆切の仕方を世に広められた福澤先生の先見性と、教育の足跡に日本のビジネス発展の礎があり、社会に貢献する大学として誇ってよいのではないでしょう。

その第3巻の頁555では文字之教端書として、「文章を書くに、むずかしき漢字をば成丈け用ひざるやう心掛けることなり。…子供を苦しめるは無益の戯と云て可なり」と書かれています。読めない漢字や語句や理解しづらい言葉を用いるのではなく、誰にでも分かりやすい書き方が推奨されています。また頁611辺りでも「今の世の中の流行する学者先生の文章と言うものもその楽屋に這入りて見れば大抵この位の趣向なるゆへ、少年の輩、必ず其難文に欺かれざるやう用心す可し。其文を恐るる勿れ。…易き文章を学ぶ可きなり。」と書かれています。

各分野で様々な専門家と交わる機会が仕事上あります。新聞や雑誌やTV番組に出てくるコメンテーターでもそうですが、本質を良く理解し、読書量や情報量が多い中からやはり分かりやすい表現で的確に伝えられるかが鍵と思います。専門用語を極力回避しながら、その世界の人にしか通じない言葉を使うときには最初に説明を加えて、分かりやすく解説すべきと思います。それでも現代は情報量が多く、新しい言葉と古い言葉双方の理解力や発信力も要ると思います。今のコロナ禍における臨床医や基礎科学者のコロナ感染に対する対応の仕方や本質を分かりやすく説明できている専門家は残念ながら希少の様に思います。マスコミも報道に気を使っていますが、呼ばれて説明される専門の方々のご苦労と、そのサイエンス力の真価は、一般の人たちに如何に分かりやすく、的確に問題点や、今後の対処の仕方を伝えられるかどうかにもあるでしょう。もう少し特集番組を組んで、感染を抑さえながら、経済を回していく賢人達のコメントを聴ける放送があっても良いのではないでしょうか。難問ですがマスコミ報道はより正しく、より広範な視野に気を配る必要があり、特に死に至る感染症の恐怖がある今のコロナ禍では中途半端な情報拡散は駄目と思います。

例えば、ワクチンの有効性と問題点、今後の対応方針に関して、マスコミの放送と政府からの発表とインターネット情報との間に困った隔たりがあります。一部のマスコミでは今のワクチン有効発表により来年のオリンピック開催に向けて心配点は解消されつつあるような楽観論があります。その逆にまだまだ安全性の確保に時間がかかり、東京オリンピックの2021年開催は難しいと言う慎重論も当然の様に出ています。政府や行政からの発表は遅れて、毎日の感染者数の増加からの懸念を述べる事に終始し、先の見通しに関して甚だ不十分であり、コロナ禍で商売が行き詰まっている中小企業や飲食業者の方々の実態に即した政策が打てて居ないと思います。オリンピックに向けて準備を進めているアスリートは何を頼りにできるのか。各種専門家の分かりやすい言葉、専門用語をかみ砕いた平易な言葉での来年の見通しを語る番組が必用と思います。見る側の選択なのかもしれませんが、新聞やラジオ側には分かりやすく報道する責務があり、政府もそのような活動を途切れることなく誠実に実行しないと、更に自殺者が増えて、経済活動もより変調を来してしまいます。このコロナ禍による社会問題が間違った方向にずれない手立てと報道が迅速に必要と思います。

(野村政直:慶友三田会会長・石原産業社長室・医学博士)

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