野村11)福澤諭吉全集の牛歩研究の第11話と、今のコロナ禍について・・・35号

「福澤諭吉全集の牛歩研究11と、今のコロナ禍について

                       野村 政直 (平成15、経)

今年の2月頃には温かくなればコロナによる冬風邪は治まり、影響は長くは残らないだろうと言う見方が多かった様に思います。しかし、このお盆を過ぎた夏になっても新型ウイルスによるパンデミックは収まるどころか、世界中で拡大傾向が続いています。また特効薬も未だ見つけられず、希望は各国で開発が急がれているワクチン開発になっています。こちらは欧米やロシアや中国でまずは自国の防衛手段として、開発が進んできています。日本でも大阪大学のグループなどがワクチン開発を一歩先へと進めています。ロシアでは今年の晩夏からワクチン接種が始まるとの事ですが、人に対する安全性に関して、少し懸念がある様に報道されています。日本はアメリカのモデルナ社と、ファイザー社のワクチンを分けてもらう交渉が出来たようで、順調に行けば、今年末か来年の頭頃にはそのワクチンを接種して、感染防止を図れればと期待されます。それまでは、3密を避けて、このウイルスに罹らない算段を各自が出来る範囲で実行するしか、身を守る手立てはない状況と言えます。4月時の様な医療崩壊の懸念はまだ低いと政府は云い、感染の第2波が高まって来ています。毎日多数の新規感染者の発表がマスコミから出されますが、経済活動は何とか止まらずに続けられています。株価は中央政府の支えもあり、各国ともに暴落することなく維持されています。感染元の中国では共産党一党支配力の効き目が出て、海外への報道では感染は落ち着き、経済活動も戻ってきている様に報道されています。たぶん一番早期に元に戻るのが、感染源の中国になりそうです。このパンデミックの火をつけておいて、自分たちだけいち早く回復し、世界経済をリードしようという酷い展開が予想される昨今となっています。各国とも、自国の衛生と経済の維持に四苦八苦であり、今年の第一四半期の経済指標は惨憺たるものになっています。特に観光業、飲食業、飛行機業界、アパレル業界などの落ち込みがひどく、コロナ以前の経済状態に戻るには相当な時間が年単位で必要となりそうで、この第1四半期でのGDPの落ち込みは過去最大となっています。来年夏に延期されている東京オリンピックも各国で予選の実施も必要であり、本当に来年7月に東京で開催できるか、まだ予断の許さない状況ではないでしょうか。

仕事の関係で日本の官報にも時々眼を通しますが、この夏になって相当数の破産宣告が公示されてきています。住所と氏名しか分からず、業界別の状況は官報では分かりませんが、ホテルや旅館業に代表される旅行業や、料亭やレストランといった飲食業や、アパレル関係の中小自営業者の破産宣告が増えているのではないでしょうか。歴史あるそのような活動がその地域から無くなってしまうと、コロナ禍が過ぎ去った後で、元通りの経済活動には戻らず、所謂、老舗という名のあるブランドが何処まで残るのか、大変心配な状況になっています。

さて牛歩研究に戻りますと、前回の報告ではロスチャイルド家の繁栄の礎となった正直な経済活動を先生の全巻の中からの紹介を最後にさせて頂きました。今回は役人ガスコインのお話から続けたいと思います。

第3巻の頁268の辺りで捌きの役人ガスコインの話題が紹介されていました。王子オウルスの裁判所での乱暴に対して、役人ガスコインはこの王子を叫啖したとの事です。幸い王子は反省し、罪に服し、王もこの処置を喜んだとの事で、王族の権威よりも、法の重さを説いています。明治の初めにヨーロッパ各国の法制度を学んだ欧米使節団一行が日本に戻り、江藤新平等によりアジアで初めて法治国家を目指した文明開化の時代に様々な社会問題における法律の係わり方や、その意味をご自身の遊学や書物から日本に紹介された福澤先生の活動は、国のまとめ方を模索していた明治時代に法の重さを明確にされ、政府関係者にも大いに役立つものになっていたであろうと思います。

この第3巻の頁333では、帳国の法 巻之1で、次の様な記述がありました。「ブックキイピイング(帳合)を翻訳する理由として、これまで学者は必ず貧乏で、金持ちは必ず無学なり。そこでこの帳合の法を学ぶことにより、始めて静養実学の実たる所以を知り、相立に実学を勉強して学者も金持ちとなり、金持ちも学者となりて、天下の経済、更に一面目を改め、全国の力を増すに至らん。訳者の深く願う所なり。」と書かれています。

先生は学問と商売や利益の乖離を指摘され、本来学問は実益になり、帳合は正しく、経済的に豊かになるもので、学べば学ぶほどお金持ちになり、社会も豊かになり、国益も増す。学者はそれを手助けするべきと述べられているように読み取りました。全ての商売や経済活動に通じるものであり、深く感化されるものではないかと思います。大学の学問は実益として社会に役立ち、利益の出るものになれば、大学も社会もさらに豊かに知的になって行く事でしょう。

経済学や商学等でビジネスの原理原則を学んだ後、実社会でどの様に利益を上げて、儲けていくかを本当に学ぶ場となっているかどうか、学部では時間が足りずにそれらは大学院で学ぶべきと言われるかもしれません。それでもその大学院に進むと、今度は文献を読んだりする時間が増えても実社会との密接間はあまり高まらない実態がある様にも見受けます。自分の体験談ですが、イギリスの大学院で経営学修士課程を学んだ時、確かに教科書類は講義をされる教授が直近2-3年前までに書き上げた最新のテキストが使われて、最新のビジネス講義を受ける事が出来ましたが、同時に社会活でビジネス活動を進める辺り、やはり大学院での経営学の学習は実社会での経営とはかなりの隔たりがあるようにも感じました。例えば、eビジネスの創成期であり、しきりにその必要性やIT技術や通信技術がビジネスと直結するテキスト学習時間もありましたが、自分が勤めているファインケミカルにおけるそれらの面は触れられることはなく、自分で応用して考え、活用するしかありませんでした。唯、日本の化学企業では今の商品価値を高めたり、次の薬剤を開発したりするのに、eビジネスの展開よりも人と人との繋がりや末端ユーザーとの古典的なビジネス展開が依然としてより重要な局面が多々あり、それらを疎かにして、頭で理解した経営学では、先には進めない状況が15年前には強かったし、今でも主流のように見受けられます。実際、日本やアジアや欧米諸国の化学物質管理の法律は年々更新される規制も多く、都度、行政当局からの公示に対応している日々の業務ですが、これらの実社会での対応状況は、やはり大学や大学院での授業とはどうしても乖離があるように見受けられます。

その点、今のコロナ対応は現実社会に直結した喫緊の課題であり、慶應大学も他の6つの大学と共同研究グループとして「コロナ制圧タスクフォース」を2020年5月21日に設立し、COVID-19に対する粘膜免疫ワクチンの研究開発を促進しているとの新聞記事があり、大阪大学が中心となり進めているコロナワクチンの国内での開発に慶應大学も参加できている様で、人の生き死にや健康に大いにかかわる事であり、待ったなしで大学での活動と産業界の連携した商品開発の推進が期待されます。有効なワクチンが接種できるようになり、重篤化するリスクが大きく後退すれば、今の様々な社会的な制限が緩和され、経済活動も早急に元の活動に戻っていけるのではないかと期待されます。しかし、今暫くは、そのワクチン開発情報の進展が待たれ、安心な社会が少しでも早く取り戻せることを応援するしかない状況が続いています。今はウィズコロナの時代とされ、只管その感染を避けるしかない日々が続き、換気とマスクと手洗いの日常です。

(野村政直:医学博士・慶友三田会会長・石原産業社長室)

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